第1章

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 ここはのどかな村。そこに建つ一つの学校でのお話です。  十月ごろ。今日はとても良い天気。眩しい太陽から隠してくれる雲に涼しい風、学ランを着た少年が学校に向かっていますね。 「今日は何をしてやろうかなー。いししっ。」  彼は名もない少年。ただ、野性的に生活する彼を見て、皆は猿と呼んでいます。それに習い、私もこの子を猿と呼びましょう。  猿は毎日一番に教室に着きます。理由はとても簡単。家では親がいるからやんちゃ出来ないからです。 「母も父も、俺が少し漫画を散らかしただけであんなに怒って。なんだよ。」  昨日は家にあった新刊を読み、放置したまま宿題をしていたのです。散らかった漫画を見た両親に怒られて、一人部屋にこもって課題を終わらしさっさと寝てしまいました。そのおかげか今日はとても元気です。 「もう、今日は何もやりたくない。」  元気だけが取り柄の君が何を言っているのですか。何もしなければ話が進まないでしょ。 「む、何かに励まされた気がする。そうだ、蟹のやつをいじめてやろう!」  急に元気を出した猿は、鞄から一つの苗木を取り出しました。 「あいつ、今日はおにぎりの日だ。これと交換しよう。」  いししっと笑う猿の教室の扉ががらがらと開きました。 中に入ってきたのは小柄な男の子。運動が苦手で身体も弱いけど元気な男の子です。誰かと話す時に蟹歩きになるところから、蟹と呼ばれています。 「おはよう猿。今日も一番なんだね。」 「おはよう蟹。」  二人が楽しそうに話していると、先生が入ってきて朝礼が始まりました。
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