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「…………オレのこと好きになる、魔法」
「……」
ゆっくりと離れていった相沢は、苦しそうにそう呟いて、強引に抱き締めてきた。
「……どうしても、好きなんだ……」
耳元で呻くように呟いた相沢を、振り解けなくて。
恐いくらいに愛しいと思って、焦る。
オレは教師。相沢は生徒。
バクバク言う心臓を無理矢理に押さえつけながら、弾けそうな心に言い聞かせる。
だけど。
「…………朋弥」
切なくて愛しくて優しい声で、静かに囁かれて。
築きかけてた教師だって言う想いが、崩れるのが分かる。
「ヤ、メ……」
「ヤメない。好きなんだ」
「ヤメ……」
「朋弥」
体が、震えたような気がした。
どうしよう、って。心が揺れてるのが分かる。
離れなきゃ駄目だ。
押し返して、ムリだって言わなきゃ駄目だ。
駄目だ。
「朋弥」
「ぁ……」
顔が近付いてくる。
避けなきゃ駄目だ。
駄目。
「朋弥」
「ん……」
重なる唇を、黙って受け止めてたオレは。
教師失格かも知れないけど----嬉しいと、思ってた。
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