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失礼します、と入ってきた姿を見て、正直なところ、ちょっと驚いたのは事実。
だって、そんなに素直に来ると思わなかったから。
「……何驚いてんですか」
「あー……いや、ごめん。ちゃんと来たからさ」
「来ますよ、当たり前じゃないですか」
小さく苦笑する顔に、そっか、と笑い返してから。
「で?」
「はい?」
「なんであんなコト書いたの?」
「……」
なんで? と重ねれば、相沢は少し驚いたような顔をしてまじまじとこっちを見つめてきた。
「……何? オレ、なんか変なこと言った?」
「いや……フツー、なんで白紙で出したんだーって聞くもんでしょ」
小さく笑いながら言うのに、ふむ、と頷いてから
「じゃあ……なんであんなコトしたの?」
「じゃあって……」
言われたとおりの問いを呟けば、今度は柔らかく苦笑する。
「だって別に知らなくてもいーし。抜き打ちテストってさ、オレ、一回も出来た試しなかったし」
まぁオレは計算式くらいは書いたけどね、と付け足して笑ってみせれば、相沢は今度こそにっこりと笑った。
「そんなことオレにバラしていーの? からかわれるとか考えない?」
「いーんだよ。その時はお前も白紙で出しただろって言い返すから」
「……先生ってホントに面白いよね」
くくくっと笑う相沢が、初めて年相応に見えた気がして、ゆっくりと笑う。
「なんだ。そう言う顔もするんじゃん」
「へ?」
「そっかそっか」
「……せんせ?」
きょとんとする相沢の前で、一人うんうんと納得していたのだった。
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