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「それで? なんであんなコト書いたの?」
「……それは、その……」
「何」
「……あの」
「…………言い訳は簡潔に!」
「………………なんとなく、かな……」
ひとしきり納得した後で問い直せば、悩みに悩んだ後で本心を隠すような声がそう呟いて。
「で。いるの? いないの?」
急に切羽詰まったみたいな声で聞かれて、思わずいないよ、と真っ正直に答えていた。
なんだいないんだ、となぜだか嬉しそうに呟く相沢に小さく笑ってから、お前こそどうなんだよ、と笑う。
「ぇっ? オレ?」
「そう」
「……てか、なんで教師と生徒が職員室で恋バナ?」
はぐらかすような苦笑に、お前が始めたんだよ、とさらに笑って。
「別にいいじゃん。他に先生もいないんだし」
「……そりゃそうですけど」
「モテそうだよね、相沢ってさ」
含み笑いで聞けば、そんなことないですよ、と笑う。
「で。いるの? いないの?」
そんな相沢に、かけられたのと同じ問いをかけてやれば。
ぴたり、と動きも声も止まって。
ゆっくりと、瞬き。
「ぁ……の……」
掠れた声を絞り出した後に、いるよ、と酷くしわがれた声が紡いで。
一瞬、胸の奥に小さな痛みが走ったような気がしたけれど。
縋るような目で見つめられて、そんな疑問も消えてしまう。
「何? ……どしたの?」
問いかけに、相沢は。
小さく息を吸った後で。
「……すきです」
「へ?」
「…………せんせいが……すき」
「…………ぇ?」
喘ぐみたいにそう言って、じっと、こちらを見つめてきた。
「オレ、を……すき?」
呟いた声は、情けないほど掠れていた。
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