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『朋弥くんのことが好きなんだ』
苦しそうに呟いた孝治くんは、その直後に痛そうに笑って。
『でも朋弥くんは……オレよりあの人がいいんでしょ?』
知ってるんだと、淋しそうに呟いた後で、見たこと無いくらい恐い顔した孝治くんが、妙に平べったい声を出した。
『こんなことなら、もっと早く言えば良かった』
『孝治くん……オレは……』
『慰めて欲しくなんか無いから』
いつになく厳しい声で遮った後、孝治くんは気まずそうに笑った。
『ゴメン。……忘れて』
『孝治く』
『忘れて。……オレが朋弥くんを好きだっていうのは、忘れないで欲しいけど……。みっともなくて格好悪いオレのことは、忘れて』
我が儘でゴメンねと、にっこり笑った孝治くんが、くるりと背中を向けて歩いていく。その傷ついた姿を、見送ることしかできなくて項垂れていたら。
その後すぐに、違う声に優しく呼ばれて。
----ホッとした最低なオレ。
あんなにも大切な友達を傷つけた後なのに、心からホッとするくらい好き、なんて気付いた。
オレは最低だ。
泣くなんて卑怯だし、そんな資格ないって分ってるのに止められなかったのは、傷つけた痛みと、気付いた恋の苦しさのせいで。
自分のことしか考えてないって気付いて、自己嫌悪。
優しくされるのが苦しくて、逃げ出した弱さ。
自分の全部が嫌になる。
----なのに。
「朋弥」
いつもと変わらない声にそう呼ばれた時。
やっぱりオレは、すごくホッとした。
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