love you, too

5/6
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 奥のベッドの周りだけにカーテンが引かれ、誰かが----朋弥がいることを知らせている。  そっと近付いてみれば、苦しげに眉を寄せたままで眠っている朋弥がいた。 「…………泣いて、る……?」  閉じられた目尻に、数日前に見たばかりの涙を見つけて、ぎしりと胸の奥が痛む。 「……朋弥」  そっと呼んで涙を拭ってやれば、ひくり、と瞼が揺れて。  うっすらと開かれた瞳の向こうで、朋弥は心底ホッとしたような顔で微笑った。 「…………あいざ……」 「……朋弥……?」  その幼い笑みは、呼びかけにアッサリと姿を消す。 「…………なんで、ここにいんの?」 「……櫻木に、聞いたから」 「っ……」  不安を浮かべていた瞳が哀しそうに揺れた後、朋弥はゆっくりと首を振った。 「……オレ、最低なんだ」 「朋弥?」 「……孝治くんのこと傷つけたのに……なのに、相沢がオレの名前呼んでくれて、ホッとして……。自分のことばっか」  唐突な台詞についていけずに黙り込めば、唇だけが小さく嗤う。 「ゲンメツした?」 「何が?」 「だってオレ……孝治くんのこと傷つけた後に、自分のこと考えたんだ……。……相沢の声聞いて、自分だけ安心して……」  自嘲に歪む唇と、またしても溢れ出す涙と。  どちらも愛しく思えて、学校の保健室だと言うことを一時忘れ、その額に唇で触れた。 「あいざ……?」 「可愛いよ」 「は?」 「可愛い」 「何言って……」 「オレの声聞いて安心したんでしょ?」 「っ……それはっ……今はそんなこと」  さっと赤みの差す頬に手を添えて、今度はその唇にキスを贈る。  呆然と見つめてくるのに笑いかけてやってから、枕の上に散らばっている髪にくしゃりと触れた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!