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奥のベッドの周りだけにカーテンが引かれ、誰かが----朋弥がいることを知らせている。
そっと近付いてみれば、苦しげに眉を寄せたままで眠っている朋弥がいた。
「…………泣いて、る……?」
閉じられた目尻に、数日前に見たばかりの涙を見つけて、ぎしりと胸の奥が痛む。
「……朋弥」
そっと呼んで涙を拭ってやれば、ひくり、と瞼が揺れて。
うっすらと開かれた瞳の向こうで、朋弥は心底ホッとしたような顔で微笑った。
「…………あいざ……」
「……朋弥……?」
その幼い笑みは、呼びかけにアッサリと姿を消す。
「…………なんで、ここにいんの?」
「……櫻木に、聞いたから」
「っ……」
不安を浮かべていた瞳が哀しそうに揺れた後、朋弥はゆっくりと首を振った。
「……オレ、最低なんだ」
「朋弥?」
「……孝治くんのこと傷つけたのに……なのに、相沢がオレの名前呼んでくれて、ホッとして……。自分のことばっか」
唐突な台詞についていけずに黙り込めば、唇だけが小さく嗤う。
「ゲンメツした?」
「何が?」
「だってオレ……孝治くんのこと傷つけた後に、自分のこと考えたんだ……。……相沢の声聞いて、自分だけ安心して……」
自嘲に歪む唇と、またしても溢れ出す涙と。
どちらも愛しく思えて、学校の保健室だと言うことを一時忘れ、その額に唇で触れた。
「あいざ……?」
「可愛いよ」
「は?」
「可愛い」
「何言って……」
「オレの声聞いて安心したんでしょ?」
「っ……それはっ……今はそんなこと」
さっと赤みの差す頬に手を添えて、今度はその唇にキスを贈る。
呆然と見つめてくるのに笑いかけてやってから、枕の上に散らばっている髪にくしゃりと触れた。
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