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「朋弥くん、途中まで一緒に帰らない?」
聞き慣れた声に顔を上げてから、孝治くん、と笑い返して。頷きかけてからハタと思い出すのは、体育館からの帰り道でのことだ。
『後で職員室来てね』
『ぇ、なんで……』
『新学期早々遅れてきたでしょ?』
にっこり笑って、後でね、と去っていった先生の姿は、なんとなく友達みたいだった。
そんな風に思い出しながら、ごめん、と呟く。
「職員室行かなきゃ駄目なんだ」
「なんで?」
「んー……なんか、遅刻したから、そのせいだと思うけど」
「待ってるよ」
にっこりと笑って即答してくれた孝治くんに、ありがとう、と笑って。
「けど、いつ終わるか分んないし……いいよ、先帰ってて」
「そう?」
「うん」
ごめんね、と謝ってから、軽い鞄を肩に提げる。
「じゃあ、明日ね」
「うん、明日」
見送ってくれる孝治くんに手を振って、職員室へ。
失礼します、とドアを開けて先生の席まで足早に歩く。
「先生」
「え? おー、来たの」
「来ましたけど」
えらいじゃん、と笑う顔は、なんとなく優しい。
「じゃ、手伝って」
「は?」
「遅刻したでしょ?」
「しましたけど……」
「だから、手伝ってよ」
「何を」
「プリント運ぶの、手伝ってよ」
多くて困ってたんだ、と苦笑する先生を、一度マジマジと見つめてから
「……お説教……じゃ、ないんですか……?」
「ぇ? して欲しいの?」
「いや、そんなんじゃない、です、けど……」
「じゃあいいじゃん」
ケラケラと笑う姿に、なんとなく首を傾げつつ、促されるままにプリント運びを手伝った。
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