♯9

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翌朝王城に迎えに行くとフラウにレイナが既に門の所でスタンバっていた。 「おはようございます」 「おはようございます伯爵様」 「ユウヒ様…おはようございます…」 レイナが凄く眠そうだ… 用意してあった馬車に乗る。 「王様には俺が伝えなくてよかったのか?」 「はい。伯爵様のお屋敷へ遊びに行きたいと伝えましたら、何故か凄く喜んでいらっしゃいました」 「ユウヒさまぁー…それよりもお姉様がはしゃぎすぎて…夜中に部屋に来て遅くまでおしゃべりを…」 「大変だったなぁ…」 「えーしょうがないでしょ!だって…」 「だってもありません!私は寝不足なのです!」 だいぶ口調が砕けてきたのは王城から離れたからか。 「久しぶりにお城から出るし…」 「そうなのか?」 「ええ…。元夫の愛人…今は王女か…の一族が狙いに来るかもしれないし…誘拐とかあったでしょ…。本当に感謝してるわ、貴方のおかげで外に出れた…。父に伯爵様の名前出したら二つ返事で了解をもらえたし。知ってる?伯爵様はフローティア王国の守護者の二つ名で噂されてるのを?」 「そうですね、私付きの従者からも聞きましたわ」 俺もミシェルのような立場になったという訳か… 「朝兄さんと話したけど、貴方を凄く褒めてたわよ。お前もレイナと一緒に嫁いだらどうだ?って言われたわ」 「はははっ…」 前代未聞だろそれ…。一人の男の子に二人の王女とか… 「私もそれはいい考えかなって思ったけど……さすがに周りが許してくれないわ。いつかは臣下の誰かの元に嫁ぐことになりそうね…」 「そっかぁ…残念だな…」 「えっ…?」 馬車が停まり家に着いた。この家は新領地に行っても、王都での活動拠点として俺の家のままだ。 学園も卒業試験を前倒しで受けることになっている。 「「「「「「いらっしゃいませー」」」」」」 皆がフラウを出迎えてくれた。 「おじゃましまーす」 皆が一人一人挨拶をしていく。 「何この愛らしい二人の女の子は⁉伯爵様の趣味の幅が広いの?」 マナとサラの事だろう 「違いますよ。外見だけで判断せずに相手と過ごし、愛した女性です」 「えっ…今何歳?」 「サラは一つ下で、マナは十五です」 「あっ結婚できる歳ではあるんだね。ごめんね…外見だけで判断しちゃった…」 本当にすまなそうにするフラウに二人は笑って首を横に振る。 「大丈夫です!私はもうすぐ王国一の美女に成長して見せますから!」 周りからは暖かい視線が注ぐが、俺はサラが間違いなく王国一…いやイースで一番綺麗な女性になると思う。 【私は…たぶんこのままかもしれないけど、ユウヒ様だけを愛していますのて問題ありません】 「眩しい…純粋な笑顔が私の心に…」 第一王女だからと皆緊張していたが、フラウの気さくさに打ち解けたのか皆笑顔だ。 「これは?」 マナの黒板を指差す。 マナがカリカリカリカリと文字を書く。 【私は小さい頃病気にかかり話すことができません。前は木炭の欠片を布の端切に書いていたのですが…ユウヒ様がプレゼントしてくれて。】 【書くのに時間がかかるので…すみません】 「いやいいよ!凄く待つからお話たくさんしようね」 フラウはマナを気に入ったのか抱きしめた。 「んー細いなぁ…いっぱい食べないとね」 【昔住んでいた所はあまり食べることができなかったので、いっぱいお手伝いしてお腹いっぱいになれる今が幸せなんです】 「そうなんだ…よかったね。伯爵様と縁が結ばれて」 その言葉に…マナは最高の笑顔を返した… ハグっ 「可愛い過ぎだマナ…」 一瞬でマナの後ろにまわり、抱きしめた。 顔を赤め照れ笑いするマナを見て… 「大事にされてるんだね…お互いに」 朝は街に皆と出かけ、昼は家でゆっくりと過ごす。 「レイチェル、疲れてないか?」 「大丈夫ですぅ。寝てばかりもいられません!ん⁉︎」 ふらついて倒れそうになったところをフラウが支えてくれた。 「ありがとうございます、フラウ様」 「いいのよ……貴女には本当に…感謝しているし…謝らないといけない」 「えっ?私は何も…」 「レイナを守ってくれた。王族…いえ…姉として感謝しています…ありがとう。そして…騎士団の不甲斐ないせいで危険な目に合わせ、更に騎士団の中から…裏切り者を出してしまった。これは統括する者の責任…つまり私達……ごめんなさい」 フラウは頭を下げた。 「いいんですよぉ。それなら私も教師として生徒を…そして…家族を…大切な家族を守ろうとしただけですから」 ああ…レイチェルはいつもふわふわしている感じだが、人一倍勇気がある…優しさがある。 だからこそ俺はレイチェルが愛しい… 「素敵だわ…。こんなに伯爵様を想う女性がいるのに…いがみあってない…。むしろ家族だと言える…」 「あー…ちなみにもう一人、森の王国の王女も…」 「他国の王女まで…」 「と…」 シュン 「私がいるわ」 神々しい光を放ちアシュレイが降臨。 「め…女神様⁈」 「私の名はアシュレイ。命の女神…たまに愛も扱っているわ」 「アシュレイは俺の死後、魂を拾い寄り添う約束をしている」 「もちろん、今のこの世界でもそんな仲よ」 「アシュレイ様は私達の優しいお姉さんですぅ」 お前もなレイチェル。
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