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夜
皆が集まりお酒やジュースを手に乾杯をした。しかし明日は早い為早々に切り上げる予定ではある。
皆賑やかに談笑している中、時折見せるサラの物憂げな顔が心配だった。
レイナ達を送り届け屋敷へ帰ると…一人部屋の窓から夜空を眺めるサラの姿が見えた。
サラの部屋に行き、扉をノックする。
「サラ、入っていいか?」
「いいよー」
「お邪魔しまーす」
「ふふ、自分の屋敷なのにね。それで…結婚式前の夜に私を可愛いがってくれるなんて…明日は目の下に隈ができそう…」
「サラ…何か悩みごとあるだろ?」
「何?急に…」
「俺にも話せないことか?」
「……ごめん……って…言いたいところだけど…もう…私の力じゃ…どうにも…できないかも…」
「話してくれるか?」
「うん…。お兄ちゃん…私のこと捨ててもいい…。お兄ちゃんの事好きだけど…心から愛してるけど…私の願いを聞いてほしい…」
「つまり…俺と別れる決心をさせる程…大事なことなんだな」
サラは涙を流し頷いた。
「前…妹の話を少ししたでしょ…」
「あぁ…背を越されたとか言ってた」
「そう…。家族の中で唯一幸せになってほしいと思える子。妹…ミレイが…どこかに売られるかもしれない…」
「ちょ⁈どういうことだ!」
「私の故郷は王国の北にある村で…貧しい所なの。生きていくためには…娘に体を売らせる程…。国境近くで…商人や旅人を相手に周りの娘は…。ただ…私はまだ体も小さかったし…結婚できる十五前に家を出たから…そんな事はしなかった。でも…ミレイは…十五を迎えた。」
「しかし、王国では人身売買は禁止されている。子供に…そうか十五歳なら…働かせたり…」
「どうしよう…。私…この一年…頑張って貯めたお金を持って…妹を迎えに行こうと…。親と縁を切ろうと…。でも…いつも…嫌いな村や家族を考えると…一歩を…踏み出せなかった…。この二年間…音信不通の私を…妹は…嫌いに…」
「サラ…今から迎えに行くぞ」
「えっ?」
「サラの大切な妹は…もう俺達の大切な家族だ。それに…お前と別れるなんて…俺には…できない…」
「お兄ちゃん…」
「…さぁ、故郷を思い浮かべて。俺が連れて行って…一緒にミレイちゃんを救い出そう」
「うんっ!」
と、その前に荷物を用意する為五分だけ待ってもらった。
「さぁ行くぞ」
「ありがとうお兄ちゃん」
サラと手を繋ぎ、神様特権のピンポイント想像転移を行使した。
シュン
「…寂れてるな」
「ここじゃ…名産や農産物もないし…。周りの村からは隠れ娼婦村なんて悪口も言われたりしたよ…。古屋はいっぱいあるけど…半分は…そういうのに使われてるの…」
「サラ…とりあえず話し合いは俺に任せてもらっていいか?その方が早く済むかもしれない」
「わかった。ごめんねお兄ちゃん…」
「いいよ。そのかわり…」
「?」
「俺達の子供…たくさんつくろうな」
「ちょ!…へへっ…もう…こんな時に…」
「サラの実家は?」
「あそこだよ」
「……」
「…ははっ…。見た目もう崩れそうだよね…」
コンコン
「夜分遅くすいません」
「はいはい。どちらさんかい?」
「ちょっと買いたいものがありまして…」
「あら…お客さんだね?」
扉が開き体つきがいい?…いや…まんまる…。まぁ…とりあえずは義母になるのか…。
「ミレイと言う娘はこちらの家かい?」
「そうだよ。いやぁお兄さんいい身なりしてるねぇ。一晩銀貨六枚だが…今なら三枚にしとくよ」
「三枚か…。とりあえず本人を見せてもらっていいかな?まだ初ならもっと出してもいいが…」
「本当かい?」
「ああ。もしくは買って帰ってもいい?」
「ちょ、ちょっと連れてくるから待っとくれ」
母親は慌てて中に入っていった。
俺の後ろにいたサラには気付かなかったようだ。
「お兄さん!こいつがミレイだよ」
絶句した…
マナと出会った頃のように痩せ細った体。服は布切れのような物で、あちこちから肌が見えている。胸も片方見えていた…。そして…痣が至る所に…。片目を隠すように布が巻かれている。
そして…股の所に血が…
「初物か?」
「ああ。ちょうど相手させようと思ったら月のものがね…ったく商売にならないよ…」
だからか…。
「よし買った。いくらになる?」
「そうだねぇ…金貨一枚だ」
「よし買った!」
「に、兄さん⁉︎本当にいいのかい?」
「ああ。ほら」
金貨を渡すとまじまじと見つめ、誰にも盗られないようにすぐに懐にしまった。
「ミレイ、よかったねぇ。こんなお前でも私らの役に立てたんだ、親孝行と思ってちゃんと奉仕するんだよ」
「ならこれにサインしてくれ。内容はミレイを俺の所有とし、家族とは縁を切ると書いてある」
「はいよ」
母親は目をさらっと通すとサインをして渡した。
「確かに。さて…帰ったら…へへっ」
「兄さんも好きだねぇ」
「おっともう一つ…サラと言う娘はどこの家か知ってるかい?聞いた話じゃちっこい娘らしいんだが…」
「あー…あの娘はね…本当親を馬鹿にして…あぁ、確かにこの家にいたんだけどね…いつのまにかいなくなってたんだよぉ…。まぁ、あんな娘働くとこもなく野たれ死んでるかも知れないね」
「ありゃ…ちっ!金貨三枚位ならだそうと…」
「本当かい!…なら兄さん…こうしようじゃないか…」
母親はニタァと笑い…
「たぶん王都近くにいるはずなんだよ。もし見つけたらそのまま攫ってくれていいよ。いないかもしれないから…金貨二枚でどうだい…?」
「は?いないかもしれないのか…」
「…わかった…金貨一枚でどうだい?」
「よし、ほらよ」
金貨を渡すとまたすぐに懐に入れた。
「もう返せと言われても無理だからね」
どこまでがめついんだか…
「わかってるさ。ちなみに…」
契約書にサラの名前を書いて再びサインをもらった。
「にしても兄さんはかなり羽振りがいいみたいじゃないかぁ。どうだい?まだ紹介できるよ?」
当初の目的は達成できた。
「これで…できるだけの子供を買いたい…」
サラが俺の後ろから出てきた。
「あらぁ、こんな別嬪さんがいながらねぇ…」
サラから袋を受け取るとニヤニヤしながら枚数を数える。
金貨三枚に銀貨八十枚…。
だいたい四人くらいになるのか…
「この村に紹介できる人数は何人くらいだ?」
「そうさねぇ…今は五人くらいの娘達だけだね。最近は男の子しか産まれてないのさ」
「よし、金貨を二枚追加するから五人を買おう」
「ははっ、一年位の売り上げが一日であがるなんてね。ちょっと待ってな」
サラの母親はどこかへ歩いて行った。
「…お兄ちゃん…ごめんなさい…」
「いいんだ…。それよりこれをミレイに着せて」
一枚の毛布を空間から取り出して渡す。
「ミレイ…お姉ちゃんだよ…サラだよ…約束…遅くなってごめんね…」
ミレイの布が巻かれていない方の目が開き涙を流す。
「サラ…姉…」
細い腕を上げサラに伸ばす。サラは優しくミレイを抱きしめた。
「あいよ!お待たせ…。ミレイ?あんたの連れは美人な上に優しいんだねぇ」
母親の後ろにはミレイと同じようにボロを着せられ、生気を失った目の五人の少女が。
「初物は二人…三人は貫通済みだよ」
「わかった」
「毎度あり!また贔屓にしておくれよ」
「いや…今日で最後だな。サラ…帰ろう」
「はい…。こんな村早く去りたいです」
母親は目を開き口をパクパクさせていた。
「あんた…まさか…」
「あなたと血が繋がっていると考えるだけで、吐き気がします。この方が今後契約書の通り私達の所有者となりますので、一切の手出しをしないで下さい」
「ちょっとあんた!私を騙したのかい?」
「いや。俺は普通に商談しただけだ。あんたは了承し契約書にサインしただろ?」
「あんなの無効だよ!サラが上玉になっているんだ!金貨一枚で…」
「もう返せと言われても無理だよ…あんたが言った言葉だよな?」
「くっ…。まぁいい。あんた…生きて帰れると思ってるのかい?今後の取引がないとわかればあんたの身ぐるみを剥いで有り金を奪うだけさ」
母親が笛を鳴らすと、男どもが集まってきた。
「この村はね娼婦の村と言われる以外にも…盗賊の村と呼ばれているんだよ!」
「ほう…」
先ほど買った少女の中にやけに白い肌の少女がいた。たぶん北の国から連れてきたのかもしれない。
「ここの領主も知ってるのか?」
「はんっ!私らが国境を越える為に袖の下を渡さないといけないからねぇ。まぁ今回はその必要も…」
パスパスパスパスパスパスッ
サイレンサー付きの拳銃二丁で男達を倒していき、あっという間に全滅させた。
「まぁ…もう村は閉村だな」
「……この⁈クソガキが!よくも…。領主に知らせてこの領から…」
「無理無理。一週間以内にここの領主は交代だ。俺が王様に報告する」
王様というフレーズに母親は青ざめる。
「名前を言ってなかったな。俺はユウヒ・イチミヤ。爵位は伯爵。そしてフローティア王国守護者の二つ名を持つ者だ」
母親はペタッと地面に尻を着いた。
「ついでに…サラの婚約者だ。しかし俺もあんたをサラやミレイの親だとは認めない。今後一切俺達に関わる事を許さない。見つけたら殺す」
殺気を当てれば気絶し倒れた。
「サラ…これでいいか?」
「私…お兄ちゃんに謝らないといけない…。ミレイを助ける為に利用して…」
「は?好きな女の為に動いただけだ。利用なんかされた覚えはないから安心しろ。さぁ帰るぞー」
七人の女性を連れ屋敷へ転移した。
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