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スフィアに入ると大賑わいだった。
「ここには門番はいないのですか?」
普通主要都市ともなれば門番がいて身元や荷物の確認を行う。
「この門は特別でな、スフィアに住んでいる民や商人は身分証の代わりに腕に輪っかを着けているんだ。つけていないものは門で弾かれ…そのまま外に建てた牢に入れられる。他所から来るものは正面の門から普通の都市と同じようなことをされるがな」
「しかし腕の輪っかを誰かに借したり…」
「あれも個人に登録されていて、僅かな本人の魔力に反応して起動するんだ」
「なるほど…」
「まぁ荷物に関しては検査はするがな。また門の上、そして横にに目がついていて中身が透けて見えるようになっている」
「なら…その…私の服も…透けて…あそこに待機している人に…」
門の横の待機場の兵士を指さす。
「それは大丈夫だ。人間は骨しか映らない」
「ふぅ…安心しました。私の家では…裸を見られたらその人に嫁ぐか…自害するか…」
「え⁉︎何それ⁉︎怖い…」
「一族あげて…詰めかけるところでした…」
ラッキースケベも許されないな…
「あの…ここは?」
「ん?」
ナンシーの見る先には塀に囲まれた広い園庭で楽しそうに笑い遊ぶ子供達とエプロンを付けた保母さん。
「保育園ですね」
「保育園?」
「あー…例えば両親が共働きの場合、小さい子がいれば面倒を見る為どちらか片方が働けない環境になります。自営なら仕事場で見ることもできますが…」
「共働き…というと働いている女性がたくさんスフィアにはいらっしゃるのですか?」
王都や他の領地では、主に稼ぎ頭は男性だからな。
「ええ。ちなみに今保育園はスフィアに四つあり、あと二つ建設中です。労働力の確保の為に私も推奨しています。二人働けばお金に余裕ができ子供の出生率も上がります。それは領地の繁栄にも繋がるのです」
「なるほど…。しかし…男性からしてみれば面白くないと見られる可能性はありませんか?」
「領主である私はそんな風に見ません。現に生き生きと働いている妻を誇らしく思います。確かに稼ぎが同じくらいであれば軋轢が生じるかもしれません。しかし私は領地の将来を考え説明会や、立て看板に豊かになる為にどうするべきか書いて貼り出しています」
「なるほど」
「それに…幼少期の教育は重要です。知っていますか…王国の識字率を。平民は約五人に二人しか字が読めないのです。そして簡単な計算もできなかったりする。しかし、ここの子供達は遊び…そして勉強も頑張っています」
「…凄いですわ。しかし利用料金は…」
「確か貴族の幼少期、家庭教師をつけると月銀貨三十枚から…より高等な教育になれば金貨一枚程ですね。ここでは幼少期の保育園利用料金は月銅貨二十枚。ただし理由がある家庭には…例えば片親しかいない場合等…減額されます。また幼少期教育の後は小等部から中等部までを義務教育としより高い教育を受けさせます。それからは自分なりの道を見つけられるように、私達のように学園に通わせたり、働いたり…決めてもらいます」
「それが…発展につながるのですね…」
「はい。しかし…子供を預かるということは…家族の接点を少なくしてしまいます。なのでドラグーン領では週に二日から三日を休日にするように推奨しています」
「しかし売上が落ちてしまえば…」
「ですので、働き方を見直させより効率よく働ける工夫を共に考えています。街にある役所にそういう部署を設けました」
「ふぅ…もの凄い改革を実行されているのですね…」
「新しい領地だからこそなせることです。伝統や慣習に縛られず民の為に行動し…結果繁栄に結びつければと思っています」
歩みを進め結婚式の会場でもある教会へ来た。
この教会は命の女神アシュレイを信仰している。
時折天界から降りてきては民の相談や治療等をしている為、人気は絶大だ。
ちなみに領主邸の横に教会があり孤児院も併設してある。
孤児院でも同じような教育を施し、そして俺の妻達が時々来ては面倒を見ていた。
親の代わりと言えないけれど無性の愛を与えて優しい子に育てていくのが目標である。
教会に着くと俺専属の執事にそそくさと連れて行かれ着替えさせられた…。
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