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応客間に通されて、紅茶をいただく。
「それで…二人はその…そういう関係なのか?」
公爵から遠慮がちにでた言葉に俺とナンシー先輩はお互い顔を合わせた。
「御父様…まだ知り合って間もないのです。お友達…ですね…。伯爵様を最初に存じあげたのが学園でした。今は伯爵様の正室や側室になっておられる女性の為に、二百人を相手に闘って勝利をおさめたのですよ」
「はははっ…若気の至です…」
「ふむ…。なら…ドラグーン伯爵殿…娘の事をどう思っておる?」
「俺は…私は…素敵な女性だと思います。人の為に動け感謝の気持ちを忘れない…それがナンシー先輩だと思います」
「…伯爵様…」
ナンシー先輩は頬を薄っすら赤くさせていた。
もしかして……だと嬉しいな。
「ナンシーは伯爵殿のことが気に入っているようだな、はははっ」
「お、御父様!?そんな…」
「ん?違うのか?男が近寄ってきたのを見たことがない…しかし、伯爵殿とは気軽に接しているように見える」
「そ、それは…その…」
「で?どうだ?好きか?」
「御本人の前ですよ…」
「ははっ、恥ずかしいのか。まぁ人の恋沙汰は楽しいものだ。許してくれ…」
「もうっ!…もし…好きな殿方ができても…こちらの家に入っていただける方でないと…」
「失礼。御兄弟は?」
「…そういえばお話してませんでしたね…。このフロスト公爵家には御父様と私しかいませんの…。御母様は小さい頃に…」
「そうですか…。急に失礼な事をお聞きしてすいませんでした」
「いえ…。でもこれは御父様が後妻や側室を取らなかったからいけないのですよ!」
「わしは別にお前を嫁に出しても構わない。その時はどこかの可哀想な貴族が領地を治めてくれるさ」
「御父様!それはなりません!ここまで御苦労なさってきましたのに…」
「よいよい…これはわしの責任だ…。若い頃は自由奔放にし戦や争いがあれば出かけ、歳を取ってできた娘のお前に苦労を掛けたくない…」
レイナも末っ子だしなぁ…
ん?もしかして…
「公爵様…まさか…その事と…今までナンシーせ…様に冷たく接していたのは…」
「伯爵殿…其方は頭の回転が早すぎるて…」
「御父様、本当なんですか⁉︎」
「ふむ………」
「そんな…」
「すまぬ。お前がこの地に住む者の事を考えているのは知っていた。だが先程言ったようにこの地を継がせようとは思わない…。伯爵殿のように優しく頼り甲斐がある若者に嫁いでほしい…」
ナンシー先輩は俯いた。
「ナンシー先輩…」
俺はハンカチを渡す。
「…ありがとう」
「でだ…。伯爵殿は兄の娘を妻に迎え多くの女性とも関係を持っているそうだな…」
「はい。お恥ずかしながら…。しかし私は誰に何と思われようと妻達を幸せにしていきます」
「わしも直に話して伯爵殿が誠実な青年であることを知った…。娘を…わしは其方に嫁がせたい」
「…御父様…私は…この地を…」
「私はナンシー様が良ければ…側室に迎えたいです。しかしナンシー様はこの地に居て領地の為に働いていただいても構いません」
「伯爵殿…どういうことか…」
「ナンシー様は体験されておられますが、私の領地からフロスト領まで一日とかからずに来れます」
「まことか!」
「あのヒコウキという乗り物ですね。私は酔ってしまいましたが…」
「ですので、頻繁にナンシー様に会いにこれます」
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