magic of love

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 一時間目の授業の途中から、君は机に頬杖で熟睡してた。  教師が気付かなかったことに、きっと本人よりもオレの方がホッとしながら。  授業終わりのチャイムにも気付かずに爆睡してる君に、そっと近付く。  教室の中は、次の移動教室に向けてざわざわしてるのに、君はまだ起きない。 「………………次、移動だよ」  ちょいちょい、と突いてそう声を掛ければ、ほぇ? とうっすら目を開けて、きょとーん、とした君の顔が。  あまりにも幼くて可愛くて。思わずぐりぐりしたくなる愛らしさに、心臓がバクバク言ってるのが分かった。 「次、移動だよって」 「えー? …………授業は?」 「終わったよ」 「うそっ」 「ホントだって」  先生もいないでしょ、と笑えばホントだ、と呆然とした君。  ホントはこうやって、くるくる表情が変わるのに。  きっと、こういう表情を普段から見せてれば、みんな近寄ってくるのに。  そんな風に思いながら、とにかく、とまだぼんやり椅子に座ってるのを急かす。 「次移動だから早く行こうよ」 「ぇ?」 「移動なんだってば」 「…………あぁ、うん。そっか」 「まだ寝てる?」 「ウルサイナ」  照れたみたいに怒る声。  だけどちょっと赤い耳たぶ。  可愛いな、なんて思いながら視線を感じて振り向けば、遠巻きにみんなが、こっちをチラチラと窺ってて。  これだけ表情が変わるのが、きっとみんなにしたら驚きだったんだろうな、なんて思ったりして。  準備ができたらしい君に、行こ、と声を掛けてから。 「寝起き悪いんだね」 「だから遅刻するんだよ」  返ってきた苦笑混じりの声が、幼くておかしかった。  近付くたびに、君が遠くなっていく錯覚。  こんなにも近いのに、あんなにも遠い。  心の話? 違う気がして、哀しくなる。  友達なんてポジションは、案外に面倒くさくて、苦しいくらいにもどかしいんだって、今更ながらに気が付いた。
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