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----だけど、甘い考えは真昼の太陽に灼き払われた。
あの日、屋上に上がったのなんて、ほんの気まぐれだったけど。今はあの日の気まぐれを、素直に褒めてやるのは難しかった。
あの時オレは、初めて本当の君と出逢ったような気がしたんだ。
紙パックの紅茶片手に、太陽の光を目一杯その華奢な体に浴びて、気持ちよさそうにキラキラ笑ってた。
その笑顔を浮かべた君こそが、真実(ほんとう)の君で。教室で一人浮いてる君は、誰か違う人間が演じてるんじゃないかと思った。
そしてその瞬間に、呆然と悟ったんだ。
オレは君が好きなんだと。
「なぁなぁ、屋上行ってみぃひん?」
「屋上? ってか上がれんの?」
「らしいで。昼休みだけ鍵開けてくれんねんて」
「へぇ……」
「どうよ?」
「…………行ってみよっか」
「よっしゃ、行こ行こ」
男が4人も5人も連れだって屋上へ向かうのが、自分のことながらにおかしくて、みんなに気付かれないように胸の内で笑ってしまったけれど。
他愛もない会話を交わしながら、階段を上りきって屋上への扉を開けたら。
目映い光と、時折吹く風が心地良いそこで、女の子達がお弁当を広げてたり、男達が馬鹿話で盛り上がったりしてた。
その場所で、君が。楽しげに笑ってるのを見つけたのは、多分オレが一番最初。
その笑顔の柔らかさや雰囲気の違いに、呆気にとられて見つめることしかできなかったオレの隣で、赤井くんやん、と声が上がって。
ようやく我に返った。
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