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大きすぎる音で鳴り始めた心臓の、その情けない動きを誰かに聞かれるんじゃないかと、ビクビクしながら。
心がもう、痛いほどに叫んでいた。
その笑顔をオレに向けて欲しい。
その笑顔を、オレだけに見せて欲しい。
オレだけに。
--------君のことが、好きだから。
どくん、と。
心臓が一回止まって、また動き出したみたいな危うい動きをして。
何度息を吸っても、酸素が肺まで届いてないみたいに息苦しくなった。
嬉しそうに紅茶を飲みながら、知らない誰かに無邪気な笑顔を見せてる君に、胸の奥がぎゅうぎゅう痛くなって、喘ぐみたいに小さく息を吸ったり吐いたりする。
無邪気を唇に浮かべて、悪戯な光を目に宿して。年相応を身に纏って立つ君の。
隣で笑うのは、上品な空気を纏った、頭の良さそうな顔をした1人の男で。
アイツが君の笑顔を独占してるんだと分かった瞬間に、苦しいほどの痛みはギラつく嫉妬へと変わる。
「あんな顔すんねんなー」
「なー」
「……」
「…………どないしたん? 恐い顔して」
「…………べつに」
渇いた喉に唾を飲み込んで、奇妙に掠れた声で呟く。
胸にくすぶる嫉妬の苦みを消すことも出来ずに、ただひたすら君を見つめていた。
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