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違和感を感じた。
それは何かに背中を掴まれて引き寄せられているかのようか抵抗感だった。
まるで行くなと誰かに引止められているような、少年の行動を阻むような。
これは、僕の死への恐怖?
人の為に命を投げ出す事への躊躇い?
――そんな訳ない。
今、彼女の命を救えるのは僕だけだ。
もしも全ての生に意味があるのなら、こんな僕の命にも意味があるのなら。
それはきっと今この瞬間、彼女を救う為だ。
だから、届け――
少年が確信を持った時、背中の違和感はすっと、どこかへ消えた。
少し痛いけどごめんね。
必死に手を伸ばし少女の身体を突き飛ばす。
少女が華奢な体格だった事も幸いし、彼女はかなりの距離を吹き飛ばされた。
時間にすれば一秒にも満たなかったであろう、突き飛ばされた少女が上体を起こしながらこちらを見て目を見開いているのが見えた。
地に伏せその姿を眺めながら少年は自分の一連の行動を振り返り、自分を突き動かした感情、そして今の心境を認識した。
あぁ、良かった。
認識出来ないほど瞬間的な後頭部への衝撃と共に少年の意識は途絶えた。
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