第1章

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男は疲れ果てていた…。 一体ここは何処なんだ…何故こんな所にいるんだ…。 男は真暗な道とは云えない道を一人、彷徨い歩いていた。 辺りは一面、木ばかり…。 勿論、街灯ひとつ無い森の山中であった。 男は、月明かりを頼りに下山を試みていた。 記憶がない…俺はたしか、仕事が終わり電車に乗っていたはずだ…。 なのに、ここは何処なんだ…。 男は、必死の思いで自分の記憶を探っていた。 その間も、山を降りようと目を凝らし、道無き道を歩き続けていた。 月明かりが届かない、暗い場所では、何度か足を取られ無様に地面に叩きつけられていた。 擦り傷、打撲の痛みでまだ意識はあったが、疲労と混乱から、あと少しでも気を抜くと気を失いそうであった。 確かに電車に乗ったのは覚えている…。 あの時、確か時計を見たはず…9時は過ぎていた。 腕時計を、月明かりに照らしてみると、夜中の2時を指している。 あれから5時間もの間、記憶が抜け落ちている…。 終点駅まで来てしまったのか…。 だとしても、何故こんな山奥に俺がいる…?。 こんな場所は一度も来た覚えは無い…。 あれこれ考えながらも、男は山道を歩き続けた。 男は再び、腕時計を月明かりに照らした。 時計の針は4時を過ぎていた。 このまま朝が来るのを待とうか… 男の体力はもう限界にきていた。 男は座り込むと、大木に身体を預け眼を閉じた。 男は、そのまま意識を失うように眠りについた。
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