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男は疲れ果てていた…。
一体ここは何処なんだ…何故こんな所にいるんだ…。
男は真暗な道とは云えない道を一人、彷徨い歩いていた。
辺りは一面、木ばかり…。
勿論、街灯ひとつ無い森の山中であった。
男は、月明かりを頼りに下山を試みていた。
記憶がない…俺はたしか、仕事が終わり電車に乗っていたはずだ…。
なのに、ここは何処なんだ…。
男は、必死の思いで自分の記憶を探っていた。
その間も、山を降りようと目を凝らし、道無き道を歩き続けていた。
月明かりが届かない、暗い場所では、何度か足を取られ無様に地面に叩きつけられていた。
擦り傷、打撲の痛みでまだ意識はあったが、疲労と混乱から、あと少しでも気を抜くと気を失いそうであった。
確かに電車に乗ったのは覚えている…。
あの時、確か時計を見たはず…9時は過ぎていた。
腕時計を、月明かりに照らしてみると、夜中の2時を指している。
あれから5時間もの間、記憶が抜け落ちている…。
終点駅まで来てしまったのか…。
だとしても、何故こんな山奥に俺がいる…?。
こんな場所は一度も来た覚えは無い…。
あれこれ考えながらも、男は山道を歩き続けた。
男は再び、腕時計を月明かりに照らした。
時計の針は4時を過ぎていた。
このまま朝が来るのを待とうか…
男の体力はもう限界にきていた。
男は座り込むと、大木に身体を預け眼を閉じた。
男は、そのまま意識を失うように眠りについた。
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