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表札を確認してインターホンを鳴らす。それだけのことに緊張したのは、バカみたいにウブな恋心のせいで。
二度鳴らしても出てくる気配がなくて、探し当てた鍵を鍵穴に差し込むのを躊躇ったのは、多分ほんの少しの疚しさのせい。
カチャリ、と鍵の開く音を聞いて、思わず一度謝った後。
「……朋弥?」
こっそりとドアを開けて、その隙間から呼びかけても返事はなくて。
留守かな、なんて思ったのも束の間
「--------朋弥?」
奥の方に人影を見つけて、ようやく中に入る。
「何してんだよ」
いるんじゃん、なんて苛立ちを隠さずに、そう声を掛けるけれど無反応。
無視すんなよと、怒りながら呼びかけても返事はなくて。
おかしいと気付いた瞬間に、靴を脱ぎ捨てて駆け出していた。
「朋弥?」
近付いてみて気付くのは、朋弥が床に倒れているという状況で。
血の気が引いていくのを感じながら駆け寄って、華奢な体を乱暴に揺すりかけて
「……何、この熱」
触れた体の熱さに気付く。
どーすんだ、なんて一人で慌てていれば、固く閉じられていた瞼が開いて、熱に潤んで焦点の合っていない瞳が現れる。
「朋弥っ。解る? オレ」
「ぁぃざ?」
「ぉまっ……何、その声」
かろうじて自分の名前だと判断できたけれど、唇の動きを見ていなければ解らなかったであろう酷い声だった。
「……病院行ったの?」
問いかけにゆっくりと首を横に振った朋弥の腕を自分の肩に回して、力の入っていない重い体を支えて
「ぁいざ?」
「病院行こ。……てか、なんでちゃんと着替えてんの?」
「がっこ……行こ、と……思っ、た」
「バカじゃないの!?」
「あさ、は……もっと……マシ、だった、から」
「あー、もういいよ、喋んなくて。聞いてるこっちが痛くなる」
何だよソレ、と噎せながら怒るのを適当にあしらってから。
「めちゃくちゃ心配したんだからな」
とりあえず一番言いたかった一言を呟いてから、着たばかりの家を出て車へと急いだ。
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