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「あいざ……」
「好き。……好きだよ。バカみたいに好き」
「……」
熱い体を抱き締めて呻くみたいに呟いたら、耳元で小さな笑い声がして。
背に腕が回される。
「恐かった。……オレの勘違いだったらどうしよって……。……こわかった」
泣きそうな声で笑う朋弥に、強引なキスをして。
「好き」
「………………感染るよ」
「いいよ。半分貰う」
「バカじゃない」
「バカみたいに好きって言ったとこじゃん」
「んっ」
ゆっくりと触れ合わせた熱い唇に。
触れられる幸せを味わい尽くした後。
「……行ってくるね」
「ん」
「……ここに、今日……また、帰ってきてもいい、かな……?」
「……ん」
「----ありがと」
もう一度唇を寄せてから、朋弥が布団に戻るのを見守って、こぼしたお茶と割れた湯呑みを片付けていれば。
もぞもぞと布団の中で体勢を変えて、こっちを向いた朋弥が、そっと笑う。
「……律儀だね、あいざぁ」
「朋弥が踏んで怪我したら困るからね」
「……そこまでマヌケじゃないよ」
「心配なんだよ。----大事な人だからさ」
「っ……」
照れたらしい朋弥が、バッと布団の中に潜り込んで、そっと目だけを覗かせるのが、堪らなく愛しい。
しゅたっと走って、朋弥の側で立ち止まって。見上げてきた潤んだ目に、煽られたどこかを理性で押しとどめて。冷えピタに覆われた額を避けて、目元に唇を寄せた。
「----行ってきます」
「……いってらっしゃい」
行ってきますって家を出たオレを。
きっと君は、お帰りって、迎えてくれる。
それは、誰にともなく言いふらしたいほどの幸せなんだよ。
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