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「めちゃくちゃカッコ良かったよねーv」
「ねーv」
「……あっ、もちろん先生もカッコいいよ」
「ねー」
「……いいよ、無理に付け足さなくても」
「だって、ねぇ?」
さっきから教室の中は女子の黄色い声一色で。男子は自分も含めてややゲンナリぐったりしている。
始業式で紹介されたのは、赤井朋弥という同い年の教師で。
本来ならオレはみんなよりも先に、男か女かも、どんな顔かも解ってるはずだったんだけど、この教師は道に迷って学校に遅刻してきていたのだ。
そんなこんなで、始業式で初めて見た赤井先生は、スラッと長い手足を持って、華奢な体に小さい顔載っけて。
そこに綺麗な瞳を埋め込んでた。
目の肥えてるはずの女子高生の殆どが、そのルックスの良さにハマってしまったらしい。
自分が赴任してきた時にも、同じような歓待を受けたことを思い出して、着任式の間中、苦笑していた。
女子高生の憧れと興味満載のキラキラした何百の瞳に見つめられるというのは、案外に怖さを秘めているもので。
あの時壇上にいた彼が、一瞬ギクリと後退ったのを見逃さなかったし、ソレを一瞬可愛いと思った自分は、どうかしていたのかもしれない。
やれやれ、と本日二度目の苦笑混じりの溜息を吐いてから。
「はいはい、その辺にして。もう終わるから」
ぱんぱんと手を叩きながらそう言って、渋々話をやめた生徒達に、よしよし、と笑ってみせる。
「ホームルーム終わったら好きなだけ喋ってね。……ってことで、今日はここまで。明日はホームルームだけだから。んで、そこで委員とか決めるから、考えとくように! じゃあ解散」
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