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ちょっと様子見のつもりで行ったハズなのに、結局下校時刻まで付合ってしまったと、慌てながら職員室に向かう。
今日でなくても良いのだけれど、早めにやってしまおうと思っていた資料作りがあったのだ。
最近----朋弥が来てから、何となくペースが乱れているような気がする。
彼を、目で追いかけてしまうから。
(あぁ……もう、だから)
イラッとしながら髪をかき混ぜて、大きな溜息を吐いた。
「……なーんかなー……」
やれやれ、ともう一つ溜息を吐いてから、職員室のドアを開けて。
「……まだやってる」
一番始めに朋弥を捜すのも、もう最近の習慣だった。
直接自分の席に行かずに、二人分のお茶を入れてから
「まだやってんの?」
「へっ?」
「ずっとやってたの?」
「あー……うん、やってた」
日本語って難しいよね、なんて苦笑した朋弥に、何言ってんだよ、と苦笑を返してから、ん、とカップを差し出す。
「お茶にしよ。休憩」
「……ありがと」
はにかんだような笑みを浮かべて、朋弥がカップを受け取る。
それだけのことに、初恋を知った中学生みたいに心が揺れて。
(うそだろ)
認めざるを得なくなった恋心に、愕然とする。
そういうことだ。自覚するのが嫌で、目を逸らして気付かないフリを続けて居たけれど。
好きなのだ、自分は。
目の前で、お茶を美味しそうに一口飲んだら、またパソコンに向かってる、真っ直ぐなこの人が。
どうしようもなく、好きなのだ。
ぐったりと椅子に座ってから、自分も気を紛らわせるためにパソコンに向かう。
「…………ねぇ相ざぁ」
「ぇ?」
自覚したばかりの想いを抱えて、捗らない作業を半ばヤケクソで続けていたら。
ゆっくりと笑った朋弥がこっちを向いて、さっきまでオレが飲んでたカップを差し出してきた。
「なに?」
「お茶にしよ」
「……」
「入れ直してきた」
ほら、と笑って差し出されて。
「イライラしちゃ駄目だよー」
笑顔で付け足されて、どうしようもなく嬉しいのと苦しいのが、ごちゃ混ぜになって胸に溢れてきたけど。
ありがとって、返してカップを受け取ったオレは、自分でも解るくらいに満面の笑みを返してた。
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