第1章 反抗期

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砂浜で開かれた二年生の冬のマラソン大会は、233人中9位だった。私にしては頑張った結果であるが、高校陸上界で全国レベルの速さが自慢だった姉と比べると平凡なタイムである。私がカメならば、彼女はウサギというよりもカモシカだろう。 姉は、完璧主義で頭が良くスポーツの才能もある。反抗期さえなかった。両親は姉と妹を比較していなかっただろうけれど、私は自分と姉を比べ、できないことを頭の中で並べてしまう。最後に「どうせ私は…」とネガティブな思考に陥るのだった。 小学生の時にもマラソン大会があった。大会で3位以内に入ると、学校の広報誌に名前が載る。姉はもちろんいつも1番。私も小さい頃から持久力はあったので、3位以内に入ることが多かった。すると、近所では「あそこの姉妹は足が速いのね。」と評判になり、親からも期待されるようになる。 小学6年生になった私。親のプレッシャーに耐えられず、最後のマラソン大会ではダラダラと走った。結果は11位。手抜きしたことはすぐにバレる。「近所の同級生は足が遅くても一生懸命走っていたのに、あなたはなんでヘラヘラ走ったの。」と家で母に怒鳴られた。 私の怒りの矛先はなぜか母でなく父に向き、近くに積み重なっていた広告をまるめて父の頭を思いきり叩いた。でも、父は怒鳴ることはしない穏やかな人柄で、何事もなかったかのように私を見つめる。 親にこれだけの暴力をふるったのは、最初で最後だった。
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