第1章  知らなかった祖母の秘密

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少し納得してほっとした千尋。 「だけど勝次さんって、もう亡くなっているんだから。それにおばあちゃんの好きな人ではないし、関係ないでしょ?」 腕を組んで考えている昌代。 「でもね―― おばあちゃんの気持ち、わかるんだよね。高祖母を尊敬していたし、一途な妹に共感していたんだよ、きっと」 「結局、勝次さんに告白できずにその妹も亡くなってしまったんだもんね。おばあちゃんも何かしてあげたかったんじゃない?」  感慨深そうにうなずく千尋。 「なんだ。そうだったのか」 (だったらおばあちゃんのために一肌脱ぐか! 明日おばあちゃんに会って話、聞いて来よう) 翌日、また病院へ行き病室に入る千尋。 「おばあちゃん、また来たよ。昨日はごめんね。今日はちゃんと話を聞くからね」 綾子はいつもとは違う、更に優しく甘い微笑みを浮かべる。 「それは嬉しいね」 「千尋のお母さんのお母さんが私、そして私のお母さんのお母さんが曾(ひい)おばあさん、そのまたお母さんにいた妹が好きだった人が……」 千尋の脳裏はまたあの宇宙論でいっぱいになるが、それを振り切って。 「知ってる。勝次さんでしょ。ボート遭難で亡くなった」 ゆっくりうなずく綾子。 「あれからその高祖母の妹の藍(あい)は勝次さんの死が信じられなくてね。帰ってくるんじゃないかと毎日七里が浜で待って、ずっと結婚もせずに、結局、一人寂しく亡くなってしまった」 「どんなに会いたかったことか」 神妙な面持ちで千尋は聞き入る。 「結局、勝次さんは2日後に遺体で見つかったんでしょ? 弟さんをかばうように抱きかかえた姿で」 千尋の手を握って、 「そう、そのお兄さんが勝次さん。弟思いのいいお兄さんだったそうよ」 祖母の手をぐっと強く握り返して。 「わかったわ。高祖母の妹さん、藍さんの気持ちを勝次さんに伝えてあげる」 「江島勝次さんでしょ。待っててね」  綾子のほうへ微笑みかけ、病室を出る千尋。 千尋、家のソファーに横になり、 (あ―― あんなこと言っちゃったけど。伝えられるわけないよね。もうこの世にいない人だし、いまさら気持ちを伝えるなんて……) ごろんと体の向きを替え、 (まあ、昔はコンピューターも電子メールもない時代だったけど、いまなら検索で名前も顔写真もすぐに見つかるからね) ふと立ち上がり、 「そっか、検索すればいいんだ」
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