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少し納得してほっとした千尋。
「だけど勝次さんって、もう亡くなっているんだから。それにおばあちゃんの好きな人ではないし、関係ないでしょ?」
腕を組んで考えている昌代。
「でもね―― おばあちゃんの気持ち、わかるんだよね。高祖母を尊敬していたし、一途な妹に共感していたんだよ、きっと」
「結局、勝次さんに告白できずにその妹も亡くなってしまったんだもんね。おばあちゃんも何かしてあげたかったんじゃない?」
感慨深そうにうなずく千尋。
「なんだ。そうだったのか」
(だったらおばあちゃんのために一肌脱ぐか! 明日おばあちゃんに会って話、聞いて来よう)
翌日、また病院へ行き病室に入る千尋。
「おばあちゃん、また来たよ。昨日はごめんね。今日はちゃんと話を聞くからね」
綾子はいつもとは違う、更に優しく甘い微笑みを浮かべる。
「それは嬉しいね」
「千尋のお母さんのお母さんが私、そして私のお母さんのお母さんが曾(ひい)おばあさん、そのまたお母さんにいた妹が好きだった人が……」
千尋の脳裏はまたあの宇宙論でいっぱいになるが、それを振り切って。
「知ってる。勝次さんでしょ。ボート遭難で亡くなった」
ゆっくりうなずく綾子。
「あれからその高祖母の妹の藍(あい)は勝次さんの死が信じられなくてね。帰ってくるんじゃないかと毎日七里が浜で待って、ずっと結婚もせずに、結局、一人寂しく亡くなってしまった」
「どんなに会いたかったことか」
神妙な面持ちで千尋は聞き入る。
「結局、勝次さんは2日後に遺体で見つかったんでしょ? 弟さんをかばうように抱きかかえた姿で」
千尋の手を握って、
「そう、そのお兄さんが勝次さん。弟思いのいいお兄さんだったそうよ」
祖母の手をぐっと強く握り返して。
「わかったわ。高祖母の妹さん、藍さんの気持ちを勝次さんに伝えてあげる」
「江島勝次さんでしょ。待っててね」
綾子のほうへ微笑みかけ、病室を出る千尋。
千尋、家のソファーに横になり、
(あ―― あんなこと言っちゃったけど。伝えられるわけないよね。もうこの世にいない人だし、いまさら気持ちを伝えるなんて……)
ごろんと体の向きを替え、
(まあ、昔はコンピューターも電子メールもない時代だったけど、いまなら検索で名前も顔写真もすぐに見つかるからね)
ふと立ち上がり、
「そっか、検索すればいいんだ」
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