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第2章 勝次との出会い
長崎県に住む大学生、江島勝次は最近弟の憲次を交通事故で亡くし、その場にいながら弟を助けられなかった罪悪感に苛まされていた。
勝次はその事故で大怪我をし、しばらく入院していた。大学を休んでクラスメートとも疎遠となったので、家で自分のフェイスブックをチェックしていると見慣れぬ名前が目に留まる。
「緑島千尋? 神奈川県在住…… 誰だこいつは?」
メッセージを読んであきれてしまう。
「おい、藍なんて友達いないぜ。それに玄孫ってなんだ?」
すぐに検索で調べてみると、玄孫は4代目の孫にあたることがわかった。
(ってことは、俺は120歳ぐらいの爺さん?)
(ふざけんじゃねえ! こんな変なやつからメッセージをもらうなんて、どうして俺ってついていないんだ)
すぐにログオフして、ベッドに不貞寝する。
とはいえ勝次は心が優しく正義感に溢れる青年だ。やはりさっきのメッセージが気にかかって寝られなかった。
(あんなメッセージを送ってきたということは何か特別な事情があるはずだ。)
ふと、それを追求したくなってきた。
再びフェイスブックにログインしてメッセージの続きを読む。
……1910年1月23日に起きたボート遭難であなたが亡くなって、あれから私の高祖母の妹さん、そう、藍さんはあなたのことが忘れられなくて、毎日七里が浜で海を見つめながら帰りを待っていました。でもあなたは結局帰りませんでしたね。藍さんはずっと独身で、独り寂しくこの世を去りました。本当にあなたのことを愛していたのです。
勝次はこのメッセージを読めば読むほどわからなくなり、自分の持っていた宇宙観が頭の中でどんでん返しとなっていた。
(おいおい、ちょっと待てよ。1910年に死んで、七里が浜に帰らなかったって…… それが今の俺とどんな関係があるっていうんだよ。俺は関係ねーだろ)
受け入れ難い悪夢から目を覚ましたい一心から、またログオフしてコンピューターの電源を切る。
勝次は横になってまだ考えている。
(1910年1月23日に起きたボート遭難って何だ?)
検索で調べることにした。
(なるほどね。108年前に起きた実際の遭難事故か。彼女が言っていたことはまんざら嘘じゃないようだな。)
(なに? 江島勝次? 同姓同名じゃん。彼の弟さんもこの事故で亡くなっているのか。)
(これも縁だから一度会って話を聞いてみるか)
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