第2章 勝次との出会い

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 そう思っていた時には勝次は既に返事を打っていた。  緑島千尋様。一度会ってお話を伺いたいです。明日はどうでしょうか。 と短いメッセージを発信してみる。 (次はまあ、返事次第だな)  勝次は疲れが溜まっていたせいか、机上でうたた寝していた。  目が覚めたときには既に千尋から返事が来ていた。 明日、1月19日金曜日、逗子市役所のロビーで午後3時に会いましょう。 私は目印に黄色い花を持っています。  (よし、行くか)  勝次は居間へ行き、テレビを見ていた母桂子(けいこ)にこう切り出す。 「俺、明日逗子へ行ってくる」  驚いた桂子は、 「えっ? 逗子って神奈川県の?」  勝次は含みのある言い方で答える。 「うん」  勝次は翌日長崎空港へ向かい、NH3738便で羽田へ。  飛行機は午後2時05分に羽田空港の第1ターミナルに着いた。    京急の乗り場を探したが、案内板があるのですぐにわかった。 (なんだ楽勝じゃん。これなら間に合うぜ)  急いで券売所を目指している時に、勝次は何かにぶつかった。  「にいちゃん!」  4歳ぐらいの子供だった。びっくりして勝次は、  「何?」  子供は少し強面になって、  「ぼくのにいちゃん!」  「ああ、君の兄ちゃんか。兄ちゃんは?」  「いなくなった」  「困ったな…… 君の名前は?」  「けんじ!」  この瞬間、勝次の脳裏には事故の場面がフラッシュバックした。 「憲次! しっかりしろ!」  突然突っ込んできた車に撥ねられ意識のない弟の憲次。  はっと我に返り、その子供に、  「俺、ぜったい、君の兄ちゃんを見つけるからね」 「心配するなよ。こっちへおいで」  勝次の呼びかけに元気に答える賢治、 「うん。おじちゃん!」  勝次、不服そうに、 「おじちゃん? 俺、大学生なんだけど……」  賢治、大学生が名前だと思い、 「大学生のおじちゃん!」  勝次はずっこけそうになるが、気を取り直し、人探しにかかる。  空港の案内所でアナウンスしてもらうと同時に自分たちでも探しながら歩いた。
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