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明日になったら、マルカから連絡がくるだろう。僕はそう思った。
ガシャンという大きな音で、目が覚めた。
目を開けると、眼前にノウハウの顔があった。白衣のノウハウが僕に覆い被さっていた。手には透明な液体の入った注射器を持っていた。だが、ノウハウの顔面には隣の丸椅子に座っていたヨハが強烈な右ストレートを打ち込んでいた。
どうやら、僕を暗殺しようとしたが、ヨハがまったく寝ないアンドロイドなのを解らなかったのだろう。
「何でもないですよ~。雷蔵様~~。お休みしていてくださ~い」
ノウハウが床に崩れ落ちると、僕は早朝の弱弱しい日差しを顔に受けた。
注射器は床へと落ちて、粉々になった。
多分、午前5時頃だろう。
「ちょっと~。このノウハウを片付けてきま~~す」
ヨハの間延びした声を聞いていると、廊下が騒がしくなった。
「大丈夫ですか!?」
複数の医者と看護婦たちが血相変えて室内に入って来た。
僕は「大丈夫です」と一言告げると、ふと思ってヨハに声をかけた。
「ヨハ。君はそのノウハウのプロフィールデータを抜き取ってくれ。坂本の向けた刺客なのはわかるけれど、確認をしておきたいんだ」
「わかり~~まりました~~」
ヨハの声を聞いていると、白衣の医者が柔和な顔で僕に言った。
「何らかの事件やトラブルに巻き込まれているんだったら、警察にちゃんと話さないといけないですよ。もう昔と違って治安がよくて、人間として平和に生きていける社会になったのですから」
僕は自分自身非合法なことをしているので、その男には適当に相槌を打って何も言わなかった。
医者は苦笑して、看護婦ともども持ち場に戻ると、ヨハが白衣のノウハウからプロフィールデータを取り出そうとした。しかし、プロフィールデータの小さい基盤は急に発火する。
プロフィールデータとはノウハウの頭部に差し込まれたカードで、そのデータには自己に指令されている詳細なデータが入っている。
「雷蔵様~~。壊れました~~」
僕は軽く舌打ちをした。
「しょうがない。自爆スイッチみたいなものなのかな? まあ、警察への証拠になるようなものを放っておくわけないか……」
「雷蔵様~~。お休みしててくださ~い。燃えていますが~、なんとか~~データを~読み取って~みますから~~」
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