片思い

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「奈々川首相。C区の発展はこれからのことも考えて、早急にしたほうがいいと思います」  テーブルに座っている面々はみなスーツで固い面持ちだ。  実直そうな男性の声に、 「ええ、私もそう思いますが……。ハイブラウシティ・Bの二の舞ではいけません。どこまでいっても、人間は人間なのですから……人として生きなければいけません」 「ですが……」  もう一人の男性は神経質そうな男だ。  「それでも、C区の存在は私たちにとって、重要なことになってきましたね……。仕方ありません」  奈々川首相。奈々川 晴美。夜鶴 公と結婚した身だが、とある事情で今は同居はしているが、離婚扱いになっていた。黒の高級なスーツを着こなし、そこへ黒の長髪を自由になびかせている。目元にチャーミングなホクロがあって、美しい人だ。 「スリー・C・バックアップ……あくまでも、人間の人間による人間のための人間へのサポートとして可決しましょう」  そこまで話すと奈々川首相は、ふと、時計を見た。 「あ、云話事町TVの時間です。誰かテレビ点けてください」  奈々川首相はこの部屋の隅に設置してある。64型のワイドスクリーンのTVを点けさせた。昔はA区というところだけに放送されていた番組は、今ではB区にも放送されて視聴率もうなぎ登りだった。 「今晩は! 云話事町TVッス!」  美人のアナウンサーがピンクのマイクを握っている。  背景にはここB区というところのビルディングから夕陽が映えている。 「はい。藤元 信二です」  藤元は3年前の日本全土を左右する野球の試合から信者が3人も集まったようだ。おかっぱ頭の黒い髪で、後ろの髪は少し長め。メガネを掛けていて小柄な体躯。寒いのに青いアロハシャツに白のスニーカーと短パン。神社なんかでお祓いに使う棒を持っている。20代の男で云話事町新教会の教祖である。 「明日の天気はきっと――」 「へっくしゅん!!」 「気温は――」 「へっくしゅん!!」 「――のようで――」 「へっくしゅん!! へっくしゅん!!」 「――になります。肌寒いですね」  美人のアナウンサーの話の最中に藤元のくしゃみが割って入る。 「運勢は、藤元さんどうぞ」 「はい、今日は時々、へっくしゅん!! になります。へっくしゅん!! ラッキーですね」  気のせいかな……美人のアナウンサーの眉間に皴が深く刻まっていく。
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