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まれにいくようなものだ!!」
「雷蔵様~~!!」
ヨハと僕は真っ青になった。後方から自転車が大急ぎで走って来たのを僕の意識の片隅が捉えた。
と、次の瞬間。
後ろのトレーラーが落雷で、二台とも大爆発をした。
訳も分からずに、フェラーリをガードレールの手前擦れ擦れで急停車させると、一人の男が自転車から降りてきた。
「いや~、よかったね~。今日は番組を早く終わらせたんだよ。ようこそ、A区へ。矢多辺 雷蔵さん」
僕は呆然とその男を見た。
藤元 信二だった。
夜も更けて寒さが本格的となる。
夜の20時。
僕は藤元の自宅にいた。
C区の追っ手からなんとか逃げ切って、キッチンでコーヒーを頂いている。フェラーリもボロボロになったため。現在、近くの車屋さんで新しい車を頼んでいる。
「もうそろそろ。夜の番組が始まっちゃうから、ここにいてね。ここなら僕のバリアー(?)があるから平気なんだ」
藤元は何故か僕に優しかった。3年前の野球でA区の人たちを酷い目に合わせた僕のことをどう思っているのだろう?
藤元は鼻歌を歌いながら、黒いコートを羽織った。
「じゃ、行ってくるね」
マルカとヨハは、広く全体的に黒が基調のキッチンのテーブルで、椅子に居住まいを正していた。
「藤元様~~。ありがとう~ございました~~」
「藤元様。お気を付けて下さい……」
マルカが僕を見つめた。
僕は頷いた。
マルカは護衛のために藤元の後を追った。その後は、九尾の狐の情報入手だ。
マルカが出ていくと、ヨハが僕の腕の包帯を点検してくれた。
血が滲んでいてヨハが険しい顔をしたが、止血剤を打てば大事はないだろうと言った。
しばらくすると、ヨハがキッチンにある真っ黒いテレビを点けた。
「お久――!! 云・話・事・町・TV!! オッケー!!」
ピンクのコートを着た美人のアナウンサーは、ピンクのマイク片手に傘をさして、A区の町並みを背景にしている。
雨が降り出していた。
「藤元さん。今日は寒いっですね」
「ええ」
藤元は傘を振り回し、能天気に鼻歌を歌っていた。
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