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「今日の午後に、国道30号線でまたまたカーチェイス・アーンド・銃撃戦が起きたッス。最近多いですねー。怪我人だけでたそうです。でも、何故か事故のことをよく覚えていないとほざいていました。そして、またあの謎の男が関係してるッス。惚れちゃいそうですねーー」
藤元はカメラに向かってピースをした(死者は藤元が生き返らした)。
藤元の後ろの電柱にはマルカが立っていた。
「番組では、その謎の男を応援しています。きっと、日本を救ってくれる救世主なのではと思っております(私が!!)。一体、どこにいるんですかねー。ね、藤元さん」
「へ……。ええ……。へ……? そうですね」
「それでは、今日の天気と運勢はって、もう寝る時間ッス!!」
番組はそこで終わった。
「雷蔵様~~。何か作りますね~~。藤元様のキッチンちょっとお借りしま~す」
ヨハが元気良くキッチンの冷蔵庫を開けると、そこには…………。
「雷蔵様~~。外で食べましょう~~」
僕とヨハは傘をさして近くのラーメンショップ(嵐のラーメンという名だ)へ向かうことにした。質素な玄関には、白いスニーカーがたくさんあった。青緑荘というアパートを横切り、コンビニの前を通ると、ラーメンショップについた。
店内は薄暗く。
お客が二・三人しかいなかった。
カウンター席しかないので、仕方なくヨハと並んで座ると、無愛想な女性バイトがメニューを持って来た。
「ラーメン。ラーメン大盛り。ラーメン極盛り。ラーメン超盛り。ラーメン一年分。……うーんと、チャーシューメンにしようかな」
30代くらいの女性バイトが残念そうな顔をして、メニューを下げようとしたら、隣のヨハはニッコリとして、野菜炒めを頼んだ。僕に食べさせるためだ。
奥の厨房には遠山 紙魚助(とおやま しみすけ)がいて、こっちを静かに見ていた。
背が低く歳は40代だ。
僕が3年前に野球の試合で必死に戦った人物だ。
「やっほー、遠山さん。あれ?!」
店の入り口から島田 谷津陽(しまだ やつよう)が入ってきた。
黒いジャージの上下を着ていて、長身で均整のとれた顔だが、目元に青い痣がある。
その後ろに赤いコートを羽織った弥生がいた。カールが無数にある赤い髪の細身の美人だ。二人とも20代後半である。
「って、矢多辺 雷蔵じゃねーか!!」
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