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「雷蔵様~~。そんな険しい表情~~。初めて見ました~~? お加減いかがですか~~?」
ヨハの間延びした声が聞き取りにくくなった。
河守 輝の言葉が頭に響いた。
(因果応報という言葉……知らないの。……悪いことを密かにしていても、いつかは日の目にでるものよ……)
晴美さん……。
僕は君を……。
因果応報か……。
今ではその言葉が怖くなった……。
でも、僕はどうしてもお金がほしいんだ……。
僕はこれからどうしたらいいんだ……。
気が付くと、黒いベットの上だった。
藤元の家の二階のようだ。隣のベットから藤元のいびきが聞こえる。近くに立っているヨハが僕の顔を覗いていた。
「雷蔵様~~。心をどこかに忘れていました~~です。大丈夫ですか~~」
「ああ……なあ、ヨハ」
「はい、なんですか~?」
「僕はどうしてスリー・C・バックアップのデータを、10憶で買おうとしたのかな? お金なら一生困らないほど持っているのに……」
ヨハはニッコリとして、
「私には解りません~。でも、雷蔵様がそうおっしゃるのなら~。答えは~~、他の人に聞いてみましょうよ~~。人間は~~いっぱいいますよ~~。答えを持っている人も~~探せばいると思いま~~す」
「はっ、はは……。そうだね。その通りだね……」
僕は急に恥ずかしくなった。
そうだ。誰かに聞いてみよう。
スリー・C・バックアップのデータ。将来で莫大な大金になる可能性をはらんでいるが、日本を窮地に陥れるかも知れない危険なデータだ。そんな大きな天秤で測るような考えなら昔から僕は何の躊躇もせずにしていたはずなのに……。でも、こんなに苦しいのなら……誰かに聞いてみよう。
僕はその時になって、河守の笑顔が浮かんだ。
なんとか美人の範囲に入っている顔をして、スタイルも並。僕の遊び友達の女の子たちより、全然普通で……。でも、どこかがいいと思える時がある。
そう、捨てたものじゃないと思える。
河守……。
朝になると雪が積もっていた。
「よーし、何か食べに行こう!! 番組まだ大丈――夫!!」
藤元の大声が一階から響いた。
僕は5時に起こされた。
それから、入浴を10分だけして、玄関へ向かうとヨハと藤元が待っていた。
「今日はコンビニの流谷 正章さんにスーパーアタッーク!! 彼、今もう働いています!!」
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