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マルカは10憶しかマイナンバーカードで支払はなかったのだ。替わりに九尾の狐に小型の拳銃を不可視高速作業という人間の目には見えない速度の行動をとって向けた。ノウハウにもこの芸当は無理だ。
膠着状態になった。
「私は20億と言ったわ」
「いいや、10憶と聞いた」
僕も多数の銃口を向けられているのだろうけど、大して気にしないことにした。
「ふー……もういいでしょ。姉さん」
僕は驚いて振り返った。
そこにいたのは、会社で見たまんまのスーツ姿の河守 輝だった。
「どうして。君が……こんなところに」
僕は九尾の狐の妹が河守だということが意外だった。
「今、仕事から急いで帰って来たのよ。雷蔵さんには、もう言ってもいいかな。原田さん
には協力してもらっているし」
いつもの気楽な調子で河守が、ここからそう遠くない喫茶店を指差した。九尾の狐も片手を挙げて周囲の狙撃銃を持った複数のノウハウを引っ込ませたらしい。僕の方へと歩いてきた。
「事は大きすぎて、私たちだけじゃ無理なのよ」
「……?」
「雷蔵様。その人も河守様も丸腰です」
マルカは僕の顔を心配そうに見つめている。僕はこっくりと頷くと九尾の狐と河守の後について行った。
ヨハは険しい顔から心配そうな顔をした。
喫茶店の店内は人が疎らで、コーヒーの匂いだけで落ち着く場所だったが、九尾の狐の指示で窓際には座らないようにした。奥のテーブルに向かった。
「周囲はノウハウが警戒しているわ」
九尾の狐はそう言うと、コーヒーと砂糖を頼んだ。
マルカは僕の隣に座り、ヨハは傍の丁度、僕が窓際から守られる位置に立った。
「雷蔵さんは、スリー・C・バックアップのことをどのくらい知っているの?」
河守は正面に座ると、開口一番その言葉を口にした。
河守の隣の九尾の狐は大き目のサングラスを外した。なるほど、目の辺りが河守にすごく似ている。
「うーんと、ノウハウを人間に近づけるための技術をC区が開発をした。それがC区の全
面的技術提供案。スリー・C・バックアップの要……くらいは」
僕がそう言うと、河守が辟易した。
「雷蔵さん。ノウハウ……つまり、国家規模のアンドロイドたちを人間に近づける技術は、どれくらい凄いと思うの? それこそ20億円でも安いわよ」
「?」
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