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「違うわ。順序が逆なの……。元々私の姉さんが四日前に、現奈々川首相が可決する前にだけど、スリー・C・バックアップのデータと共にエレクトリック・ダンスのデータを入手していたのよ。そして、私と姉さんはエレクトリック・ダンスを阻止する計画を立てていたの。そこへ後から原田さんとあなたが来たのよ」
九尾の狐がウェイトレスからコーヒーと砂糖を貰ってこちらに向いた。
「スリー・C・バックアップとは、表向きでは心・技・体の三つのスローガンから成り立つノウハウのアップデートプログラムよ。まあ、心・技・体っていうけど、ノウハウには心は入れられないわ。ただの老人福祉のためのクリーンな建前なのだけど、凄い技術は本物よ」
九尾の狐はコーヒーに砂糖を大量に入れた。
「何故、僕を巻き込んだ」
「あっきれた。自分から首を突っ込んだんじゃない」
「そうだったかな……」
「雷蔵様~~。ようはこれからそのスリー・C・バックアップのデータとエレクトリック・ダンスを~阻止して~。奈々川首相と一緒に守ればいいのですね~~」
ヨハがニッコリとした。
「そうだ……そうだよ」
僕は立ち上がろうとした。
晴美さん……。
「駄目よ。C区から盗んだスリー・C・バックアップのデータは、どうやらダミーだったのよ。それに気が付いたC区が一斉に私たちを狙ってきたの」
「え……?」
「つまり、本物はもう現奈々川首相に渡っているわ……」
河守は俯いた。
九尾の狐はコーヒーに口をつけて、
「あなたの協力がないと、現奈々川首相の暗殺は防げないのよ……。スリー・C・バックアップとエレクトリック・ダンスは昼と夜の顔。二つとも関連しているの」
一人の男がこのテーブルへやってきた。
僕の唯一の友人の原田だ。
「雷蔵さん。俺は雷蔵さんのためにと一芝居うったんですよ」
小心者でお調子者な原田は、長身で茶髪でラフな格好をしており、度なしレンズのお洒落なメガネを掛けたハンサムなおじさんだ
「あっきれた。ことの真相を知って、C区が怖くてかくまってくれって言ったのは誰?」
河守があきれた顔をして、言葉をつづけた。
「雷蔵さん。原田さんは今まで、ただ単に表舞台に、出るに出れなかっただけなのよ。私たちに関わった以上はね」
僕は混乱した。
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