九尾の狐

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 カウンター席からは九尾の狐の護衛のノウハウが二体立ち上がった。  手にはベレッタを持っている。  僕たちが質素なカウンターの奥へ行くと、飾り棚に並ぶ多種多様なコーヒーカップを目の当たりにする。左の方に更に奥へといく通路があった。そこは木製の壁で出来ていて、裏口に通ずる出入り口がある。大人が屈んでやっと入れる小さな木製の引き戸だ。 「雷蔵様。危険です!!」  マルカが急に身を挺して身を屈めようとした僕を庇った。  マルカに被弾すると同時に、喫茶店の窓が粉々に破壊された。外で散開した15体のノウハウが、サブマシンガンを一斉に撃ってきたのだ。大量の銃弾は店内のお客を殺戮する。護衛のノウハウと6体の狙撃銃を持ったノウハウがすぐさま発砲しながら、応戦していた。ヨハとマルカが自分たちの体を盾にしたりして、僕たちを木製の壁の通路へと逃がす。喫茶店のお客が一人また一人と次々に撃たれて倒れていった。周囲にバラバラとコーヒーカップや皿が散乱する。 「雷蔵様~~。河守様~~!! 身を低くして~~下さい~~!!」  ヨハは僕と河守を守って、被弾する。超特殊ラバー組織の覆うヨハの体は弾丸を受けてもその弾力でびくともしない。 「身を低くしてください!!」  マルカも九尾の狐と原田を守るため体を盾にした。  僕たちが引き戸から出る頃には、荒廃した喫茶店のお客とマスターはみんな死んでしまっていた。  鉛色の空の外へ出ると、15体ものノウハウが追いかけているのが解る。大通りを行き交う人々の驚きの顔が僕の脳裏に焼き付いた。    那珂湊商店街の喫茶店から、僕たちは九尾の狐の指示でA区の河守の住んでいる青緑荘へと戻った。那珂湊商店街では僕たちがいるとかなり被害が大きくなるからだ。河守の住まいは青緑荘(島田と広瀬の住んでいるところ。また、夜鶴が昔住んでいた)の202号室だ。その近くに藤元が住んでいるから人が死んだとしても、生き返らせることができると考えたのだろう。そして、念の為にアンジェを呼んだ。自宅の警護は複数のノウハウに任せた。もう手薄でも構わないだろう。  202号室の2LDKに着くと、河守が奥のリビングルームで私服に着替えた。九尾の狐は、エレクトリック・ダンスの情報を入手するために、小型の端末をいじり、原田はマルカを連れてリアルの情報屋へと会いに早々に外出をした。
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