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私服の河守は僕とベランダへと向かった。
外はしんしんと雪が降り積もり、11月の空は暗雲の冬空へと変わっている。
「雷蔵さん。あなたはどうしてスリー・C・バックアップに引き付けられたの?」
唐突に河守が聞いてきた。
「正直……解らないんだ」
「へ……?」
僕は暗い空を見つめた。
「僕は昔から吸血鬼が血をほしがるように、いつもお金を欲しがるんだ。何故だろう……?」
「お金は一生困らないのにね……」
河守が呆れた。
「ああ……」
僕はスリー・C・バックアップのデータを何故欲しがるのだろう。
ヨハの言葉を思い出した。
そうだ、誰かに聞いてみよう。答えを持っている人がいるはず。
僕が口を開こうとしたら、
「あのね……。こんなこというのもなんだけど、あなたは自分の力を本気で試したいのよ」
「え……?」
「そう。あなたは、巨万の富を持っているし、この日本で屈指のお金持ちだし……。だから、あなたは自分自身の力で戦いたいの。本当の勝負をね。でも、簡単に相手が負けちゃうから、いつも欲求不満で……満たされない攻撃的な欲求が辺りを彷徨っているんだわ」
僕は経済の神なのだ。
でも、人間なのか?
「僕は神なのか……? それとも、人間なのかな……?」
「あっきれた。神なんかじゃないわ。あなたは人間よ。そして、その中でも非常に弱い人間よ」
「……え?」
「あなた。ここA区で一から生活したら……。きっと、変わるわよ」
「……そ、そんな……」
「まあ、無理だけどね」
河守は悪戯っ子のように笑った。
「さあ、難しい話は置いておいて、今日の夕食を買いに行きましょ」
「ああ……」
僕と河上がコンビニに行こうとすると、九尾の狐が甘い物を買ってきてと頼んできた。僕は用心のためにヨハを連れた。
「かしこ~まりました~」
ヨハはスキップをして、外へと出た。
外は雪が降り積もっていた。
「夕食は何に~しますか~」
ヨハはコンビニの店内でサラダパック片手に、仁王立ちしていた。
「ああ……牛丼弁当とフライドチキン」
ヨハがサラダパックごと精算していると。
コンビニの流谷は「いつもありがとうございます」と、河守はデミグラスソースのカツレツとあんドーナツを数個。かにチャーハンを精算してくれていた。
コンビニの流谷が笑顔で手を振っていた。
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