九尾の狐

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 夕食後。河守が何の前触れもなくテレビを点けた。 「こんばんはッス。云話事町TVッス!!」 「ハイっす。藤元 信二ッス!!」  美人のアナウンサーの隣に、額の汗をタオルで拭いている藤元がいた。どうやらとにかく疲れているようだ。 「今日は那珂湊商店街に来たッス」  後ろにはブルーシートが散乱し血痕が所々に付着しているが、付近の人々は何やら藤元に向かって手を合わせて祈っていた。警察の人たちが藤元を見つめて唖然としていた。 「いやー。さっきまで銃弾で人がいっぱい死んでいたんですけど……」  美人のアナウンサーはピンクのマイク片手に後ろにある三番アーチを見た。そこの近くの喫茶店が激しい銃撃戦で、窓は割れ椅子やテーブルは滅茶苦茶で派手にやられていたが……。 「すいません。僕がもう生き返らしちゃったから……」  藤元は頭を下げた。 「なので、プロフィールデータが破損し、何者かに破壊されたノウハウが15体だけしか、現場に残っていないッス。製造元も判別できないっていうし……。死んだ人は生き返ってもよく覚えていないって言うし……。すいません」  美人のアナウンサーは首を垂れる。 「でも、またまたあの男が関係してるみたいですね……藤元さん?」 「え……へ……? ええ、そうですね」 「一体? どこにいるんですかねー……? 藤元さん?」  美人のアナウンサーはピンクのマイクをくたくたの藤元に向ける。 「え……へ……? ええ、そうですね」  藤元は顔をタオルで拭きながら、元気のない表情をして荒廃してしまった那珂湊商店街を見回していた。 「……なんか知っているッスか?」 「え……へ……。ええ、そうですね」  美人のアナウンサーの眉間に皺が寄って来た。 「以外とA区の藤元さんの家にいるッスか?」 「え……へ……。ええ、そうですね。もうどこかへ行っちゃったけど……」  美人のアナウンサーはニッコリ微笑むと、藤元をヘッドロック。アンド。ピンクのマイクで刺す。そして、ぐりぐり。 「てめー!! 藤元ーー!! 私の謎の男――!! 今現在独身生活真っ只中の20代後半の乙女心をどうしてくれるんじゃ――!! 謎の男のことすぐ教えろーー!!」  番組はそこで終わった……。  深夜の1時30分。  マルカと原田が戻ってきた。
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