11人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
「後は首相の二週間後の一番危険な時間帯ね。暗殺を阻止するためには奈々川首相の行動を熟知していないと……。それには、姉さんと原田さんがいるから大丈夫よね」
「ええ……。それは、問題ないわ」
九尾の狐はあんドーナツを齧る。
「ああ。その日の行動なら……」
原田は九尾の狐の端末を見つめた。
「云話事マンハッタンビルからすぐの帝都マンションの道を選挙カーが通るようだね。雷蔵さんと俺の自宅の前だなんて……ハハッ」
原田の声に、
「え? 僕の家の云話事帝都マンションなのかい?」
僕は混乱した。
「ええ。あなたの家のすぐそばで選挙戦をするみたい。きっと、他の政治家たちも老人福祉のことを考えているんだわ。確かにA区の反感をかうからかもしれないわね……。何故なら老人が大勢いるのはA区よ」
九尾の狐の言葉を反芻すると、僕は何か感じた。でも、それが何なのか今の僕には解らなかった……。
「……」
「雷蔵様~~。また、険しい顔です~~」
ヨハが心配そうな声をだすと、外から突如、一発の銃声が鳴り響いた。
ベランダへと僕たちが急いで向かうと、下の雪が積もる道路に人が倒れていた。よく見ると僕が三年前の野球の試合で戦った淀川 次郎だった。
淀川 次郎。30代の痩せている男だ。
「あ、淀川さん。あの人、遠い場所で焼き鳥屋してて、今頃帰るのよ」
河守が玄関へと走り、階下へと向かう。
「河守様~~!! 危険です~~!!」
「河守様!!」
ヨハとマルカが同時に玄関へと走り出した。
僕と原田も向かった。
底冷えする廊下へ出ると、205の部屋の銃を持った島田と弥生。その隣の部屋の3年前に野球の試合で戦った20代の広瀬が血相変えて出てきた。
島田はベレッタで、弥生は軽量化されたサブマシンガンだ。広瀬は何も持っていない。
「なんだ!!」
島田が辺りを警戒して吠えた。
「あ!! 淀川さんが倒れているわ!!」
外を見た弥生の悲鳴に似た声の後に、島田は寝間着のまま階下へと走る。
「どうしたんですか!?」
広瀬も階下へと走り出す。
僕もマカロフを抜いた。
階下へ行くと、廊下から倒れた淀川が見えるが、その遥かB区の方角から大勢の武装したノウハウが歩いてきた。
おおよそ数百体はいる。
不気味なその集団は、手にはサブマシンガンとハンドガンを持っていた。
「なんだー!! 戦争かー!!」
最初のコメントを投稿しよう!