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僕はアンジェが乗ってきた修理された黄色のランボルギーニに乗った。ヨハが助手席に俯きがちにドアを開けて座った。アンジェとマルカは4座席のランボルギーニ・ポルトフィーノに乗り込む。アンジェたちも心配していたが、潔く車に乗り込んだようだ。
4座席のポルトフィーノと黄色のランボルギーニのエストーケの後部座席には、超重量の弾薬や弾丸が置かれていた。
「雷蔵様~~」
「さあ、行こう」
僕はヨハの頭を撫でて優しく言ってC区へと向かった。
豪雨と強風の中の夜道でのドライブ。対向車がいそいそとこちらに向かっては離れていく。
ここB区の夜は静かすぎた。
「雷蔵様~~。本当に~~大丈夫ですから~。きっと、みんな生き返りますよ~~」
助手席のヨハがこれ以上ないといった心配な表情で、前方のみんなの血液をばら撒いたようなびしょびしょに濡れた夜道を見ながら話し出した。
「……」
僕は痛みのせいで、目が霞んできた。
でも、引き返すことは僕の頭には皆無だった。今を生きる人々にとって、若すぎる死は残酷すぎる。心があるのか解らない僕にもその現実が重くのしかかっていた。
「必ず生き返りますから~~。病院に戻りましょうよ~~」
「……」
死者を蘇らせる能力のある藤元は、普通の人間だった。
僕も経済の神ではなく。普通の人間だったのだろう。
C区の入り口の看板が見えてきた。
C区はB区の一部で、工場が集積した場所で、そこが2069年にB区と分離したのだ。工場は食品の加工や缶コーヒーの製造などから電気機器などやアンドロイド製造の工場を受け持っていた。ノウハウを人間に近づける技術を、集中的に行ったのは前奈々川首相の意向だった。けれど、だいぶ前からだ。ノウハウが大規模な都市開発プロジェクトで、多くの研究者の目を集めてから徐々に発展していったのは。
「さて、どこから潰すか……」
僕は霞がかる目を憎しみで凝らして、辺りを見回した。
今は夜の11時だ。
僕が停車したところはオン鳥オール工場という工場の近くだった。
黒のジープが一台駐車場に入ってきた。
僕はその自動車から攻撃しようと考えた。今は無差別に人や物を破壊したかった。
マカロフを握り、照準を合わせようとしたら、黒のジープが突然、急停車した。
運転席から一人の男がずぶ濡れになりながらショットガンを持ち出し、こちらに駆けてきた。
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