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「老人のリサイクルだよ。だが、そうでもしないとこの国は滅びる。当たり前だが、人間が人間を介護するのだから金がかかる。そこでノウハウが介護に介入するのだが、前奈々川首相のノウハウを使った老人福祉は実は金がかかるのだよ……。現奈々川首相のノウハウにスリー・C・バックアップを用いた政策は論外。莫大な金がかかるんだ……。しかし、このC区やB区は日本の発展を日々、目指さなければ日本は滅びる」
そこで、興田は若い男の肩を叩き。
「この男は有能な政治家だ。この男によってこの国は救われるんだ」
「救われる?」
僕は血が体からゆっくりと流れていることを悟った。
傷が開いて止血剤の効果も切れたのだろう。
「そうだ。エレクトリック・ダンスはその金がかかることを、金に換えるんだよ。具体的には5千万人の老人を社会から退陣してもらう。今働いている角竹社長も含めてね。65歳以上の者は例外なくノウハウの介護や援助対象になり、社会から隔離されるのだ」
老人の角竹も頷いた。
今度は角竹が話した。
「私たち老人は国の介護など必要ないのだよ。衰退した国の介護になど……。そんな国に介護や福祉などと言われても嬉しくはないのだ。逆に国の金になるのなら、それが一番いい老後だ」
「そんなはずはないでしょう。国のためと言っても、ごく一部の人間のためにしかならない。僕はそんな未来の国は御免だ!!」
僕はことの真相を知っている。
昔の僕の考えることだった。
父さんと一緒だ。
自分の利益のためには、大勢の他者を貶める。
「ふふ……。違うのだよ。それにしても、君がそんなことを言うとはね。昔の君ならきっと利益の何パーセントはくれというのだというのに」
角竹はさも愉快だと言わんばかりに、微笑んだ。
「昔は昔だ!! お前たちもA区で一からやり直せば変わるはずだ!! A区に住んでみろ!! あそこでは、みんながみんなで協力し合って日々を生きているんだ!! そんな大切な場所を窮地に落として!! ……何が楽しい!!」
僕は叫んでいた。
「まあ、そんなことより。君の処遇だ……。ここで死ぬか重犯罪刑務所行きなのは当たり前なんだがね……」
白いスーツを着た若い男がこちらに向かって好戦的な表情をする。
政治家だというが、その顔は確かにかなり精力的な顔だった。
「その前に、具体的なことを聞きたい」
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