人の持てる力

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「なんだ!! 何故寝ていない!?」 「電話を掛けさせてくれ」 「……番号を言え」  番号とは受刑者番号のことだと解ると、左腕に刻まれたバーコードの数字を言った。 「矢多辺 雷蔵か……解った。ちょっと待っていろ……」  寝ぼけまなこの看守がゆるゆると立ち上がり、柱の傍にある赤い電話を掛けて誰かと話した。  殺風景な通路を遮断していた鉄格子がようやく音を立てて開くと、看守と一諸に奥へと歩いた。 その先には右側に看守が数人いる受付のようなものがあった。 「ここの電話を使え」  看守の言葉を聞くと、僕は赤い電話の受話器を握りしめた。一か八か自分のしていた非合法なことと一緒に、首相暗殺とエレクトリック・ダンスの話をするために。  夜鶴 公の電話番号を掛けた。  3年前に聞いた。首相官邸の電話番号だった。    二日後。  現奈々川首相の晴美さんが夜鶴と一緒に僕の寝ている医務室のベットへと来た。 「雷蔵さん。ボロボロじゃないですか!? 何が起きたのです?」  晴美さんが心配な表情をしていた。  僕はベットからゆっくりと這い出て、晴美さんにエレクトリック・ダンスのことを詳しく言おうとしたが、僕の言葉は足元の犬によって、遮られた。 「ワン!!」 「スケッシー駄目じゃないか!」  夜鶴が犬の頭を叩いた。黒のジーンズと革ジャンを着た中肉中背のハンサムな男だ。黒い髪は長髪の部類に入る。年齢は僕と同じ28歳だろう。 「晴美さん。スリー・C・バックアップを今すぐ止めてくれ。スリー・C・バックアップの裏の顔は危険なんだ」 「え……?」  僕は目を大きく見開いた晴美さんと夜鶴に、今までの経緯を全て話した。  …………  晴美さんは大きく目を開けて驚いていた。 「そうですか。雷蔵さん……私たちと日本のために共に戦ってくれるのですね。あなたのしたことは今さら咎めません……」 「……ああ……。ありがとう」  僕はほっとして大きく頷いた。  晴美さんには、エレクトリック・ダンスのことと暗殺のこと、僕がスリー・C・バックアップの横流しをしようとしたことを丁寧に話した。これから、C区と僕はどうなるのだろう。もはや、ことは大きな日本という歯車が僕たちを巻き込んでいった……。
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