人の持てる力

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 まるで、何年ぶりかの晴れ渡った太陽の顔を拝んだ僕は、晴美さんと夜鶴が乗る黒のベンツへと乗った。青空には白いハトの群れが飛んでいた。  数台いる黒のベンツを見て、僕は考えた。行き先は首相官邸なのだろうか? 「晴美さん。殺された島田たちを生き返らせないと……。藤元を探そう。A区に行こうよ」  夜鶴の声は心配ではち切れそうであった。 「ええ……」  ベンツの後部座席へ晴美さんと僕は並んで座っている。黒服の運転手の隣には犬と一緒の夜鶴がいた。 「矢多辺。藤元がどこにいるか見当つくか?」 「いや、僕も必死だったから……すまない……」  晴美さんが微笑んだ。 「気にしなくていいんですよ……藤元さんなら、信者の人が3人もいます。死んだ二人は悲しいですけど。」 「信者って、確か山下と淀川と広瀬だよな」 「ええ。信者の人たちなら知っているはずです。ここからまだ生きている山下さんのところへ行きましょう。なんとかしてくれるはずです」  晴美さんは自信のある顔をした。  僕たちの乗った車はA区へと向かった。  那珂湊商店街に山下がいるという。  車で高速道路を3時間の間に僕はアンジェたちのことを考えていた。夜鶴との電話で真っ先に言ったのは、やはりアンジェたちのことだった。  晴美さんが電話に出て、国を挙げて修理すると言ってくれた。  重犯罪刑務所はA区でもB区でもない荒廃した場所にあった。  僕は青空を自由に流れる白い雲を見ながら、ふと疑問に思った。傍に晴美さんがいるのに、河守の笑顔のことを考えている自分に気が付いたのだ。 「ワン」  犬が僕を見て吠えていた。 「雷蔵さん。上の空ですよ?」 「え……あれ?」  晴美さんの一言に、僕は急に恥ずかしくなった。 「それにしても、エレクトリック・ダンス……。私の意向が完璧に横道に逸れてしまう政策ですね。人々が人間的に暮らさなければ、何もならないというのにです。私はこれからも選挙戦を勝ち抜きます。雷蔵さんのため、国のため、夜鶴さんのためにも……」  運転席の黒服がこちらを見た。 「雷蔵さん。ありがとうございます。あなたがいなければ、この国は人間的に崩壊していったでしょう」  僕の心に嬉しいという感情が湧き出てきたようだ。  まるで、初めて人に感謝された時のようだ。 「いや、僕は……」  赤面して俯くと、
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