人の持てる力

7/11
前へ
/99ページ
次へ
「ええ、実は今の期間は安全なんですよね。今まで天界で修行していました」 「……?」 「これから、また大変になりますから。いったんまた姿くらましますよ」 「……天界? ……天界……修行……?」  美人のアナウンサーは理解不能といった顔で、微笑んでいた。  番組はそこで終わった。 「河守!! みんな生き返ってくれた!! 藤元さん……ありがとう……」  僕はテレビを観て自然とそんな言葉が出た……。 「よかったですね。島田さんたちも生き返りました……」  晴美さんは嬉し涙を流した。 「ああ……」  涙に濡れた顔の晴美さんと夜鶴は目を合わせて微笑んだ。 「さあ、これで私たちだけは全て揃いましたね。……後はアンジェとマルカとヨハです!! 羽田さん。A区の青緑荘へ。その後はC区へ向かいます!!」  車はA区へ快適に向かった。  青緑荘の前で車が止まると、島田たちが騒いでいた。  晴れ渡った空の下で、島田は吠えていた。 「今からC区に行ってくる!! C区は俺たちだけでぶっ潰すから!! 雷蔵さんは休んでいてくれ!! 夜鶴!! 田場さんと津田沼も呼ぼうぜ!! 今から壊滅してやるぜーーーー!!」  弥生も、 「私も戦うわ!!」  軽量化されたマシンガンを振り回した。  晴美さんは車から降りると、みんなを静かに説得した。 「皆さん。 憎しみでは、何も生み出しません……。私が何とかします」 「でもよー!!」  島田は食い下がる。  島田の後ろには遠山と淀川が静かに闘志を湧かせていた。 「まあまあ、今はアンジェとマルカとヨハを直そうよ……」  原田は震えて粉々になったメガネをいじる。 「雷蔵さん。生き返ったはいいけど……エレクトリック・ダンスはどうしたの?」  河守は心配した顔で、僕の顔を覗いた。 「大丈夫だ……。これから、なんとかするよ……」  僕は自信のある声色で言おうとしたが、何故か赤面していた。  下を俯き、ぼそぼそとした言葉が流れた。 「そうね。私の力が必要ならいつでも言ってね、勿論、今のあなたにならタダでいいわよ」  九尾の狐が微笑んだ。 「……ハハッ」  僕は嬉しさを隠せないでいた……こんな気持ちは生まれて何回目だろうか?いや、生まれて初めてではないだろうか?
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加