両思い

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 ノウハウも人間と同じく。信用出来ない時があるということだ。  中には人間にも危険な人物も混ざっているのだろう。  ただ、人間もノウハウも大勢いる演説の場だから、信用することも大切なのかもしれない。  僕は今、自分の家の部屋に河守といる。  快晴の外から柔らかな日差しがアスファルトに照っている。九尾の狐と原田も昨日の夜に34階のキッチンに作戦行動のために来ていた。  朝食を河守とゆっくりとした後。  河守も極度の緊張をしているようで、あの河守が顔が少しだけ強張ってみえる。晴美さんもこのぶんだと大変なのだろう。  僕は胸ポケットにあるデザートイーグルという銃を密かに買っていた。  弾丸はハローポイントのようなものだ。ノウハウの鋼鉄の体にも通用することが出来る。 「雷蔵さん。もうそろそろね」 「ああ……」  僕は人間になっても、大変な問題があるのに気が付いた。  それは、信用だ。  信じ合わなければ、前に進めない時がある。  けれども、それが難しいのは昔の僕にも解っていた。  僕たちは、みんなのいる34階へと向かった。 「雷蔵さん。もうすぐよ……」  河守は僕に再び同じこと言った。  34階のキッチンには、窓際のテーブルに九尾の狐が端末を前に砂糖を大量に入れたコーヒーを飲んでいた。九尾の狐の隣に座っている原田は緊張のせいで、テーブルの上の紅茶を一口も飲んでいなかった。 「まずは、暗殺をしようとしている人間かノウハウを見つけることね」  九尾の狐は端末で、C区の重役のメールをハッキングして閲覧していた。膨大な量のそのメールには、当然社用のことが載ってあり、たまに休日はゴルフをしようと書かれた文があった。 「原田。人間の方は君に任せる。九尾の狐はノウハウを警戒してくれ」  僕はそう言うと、河守にここで待っててくれと言って、晴美さんの選挙カーが通る大通りへと拳銃を持った原田と小型の端末を持った九尾の狐と向かった。  僕の家の正面には、外にはもう大勢の人々が集まっていた。  それもB区やC区の人たちだけではない。A区の人たちもいる。  その人々を含め。見張りの警察官たちや警察の帽子を被ったノウハウたちが周囲の十字路の広い道路やカフェレストランや不動産会社。銀行などの建物の二階や付近で警備をしていた。
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