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興田 道助の選挙カーが大歓声の後に緩やかに去っていくと、今度は何台か後に晴美さんの選挙カーがやってきた。
突然、緊張していた僕の隣の原田が走りだした。
原田は探偵だ。
その脚力は常人の域を超えていた。
白いロープよりの一人の男に原田が人ごみを掻き分けボディアタックをした。すぐさま周囲の人々が悲鳴を上げる。警察の人たちも原田の方へと何人か駆け付けた。
原田は男から拳銃を取り上げる。警察の人たちもその男を一斉に取り押さえた。
原田はこちらににっこりと笑って、手を振り。
「拳銃を持つ人には、注意していますから」
人ごみの中へと埋没していった。
九尾の狐は小型の端末を脇に抱え、手を振った。
一難は去った。
後は一体?
晴美さんの選挙カーが僕の前を緩やかに通る。
選挙カーの屋根に立つ晴美さんは緊張しているが、力強くマイクを握った。
僕は辺りを警戒すると、ここから正面の建物の二階で、警備のため微動だにしなかった一体のノウハウが、突然、選挙カーに向かって大型ライフルを構えたのを目撃した。
慌ててデザートイーグルを抜くにも、間に合わない。
そのノウハウに気が付いた人々の笑顔がまた凍りついた。
けれど、そのノウハウはすぐにライフルを下げて、人間のようにお辞儀をし、こちらに手を振った。
九尾の狐が僕の隣で、
「うまくいった?」
僕は小型の端末を大事そうに抱える九尾の狐の神業のハッキング技術に感謝し、晴美さんの周りを見た。
夜鶴が晴美さんの背後に見えない様にしゃがんでいた。
後はシークレットサービスのノウハウが二体とボディガードの男性が三人。同じ選挙カーの屋根にいる。選挙カーの屋根に敵がいるか、選挙カーの屋根に敵が上るか、夜鶴はそれらを警戒しているのだ。
晴美さんは夜鶴に目で合図をすると、マイクを力強く握った。
「国民の皆さん。スリー・C・バックアップを受け入れましょう。ノウハウを人間に近づける技術は、日々のノウハウの技術開発をしてくれていましたC区のお蔭です。労働力の確保のためにも、国民のためにも、ノウハウが老人福祉には必要不可欠なのです」
辺りの人々は、内容が興田 道助と同じなので首を傾げるもの。不安げなものが現れだした。
晴美さんはニッコリと笑って、重大なことを言ってくれた。
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