選挙

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「そこで、私の政策にはノウハウを一家に一体。無料で提供します。勿論、スリー・C・バックアップのデータが入った状態でです。ノウハウに関係した部品の物価は凍結しますから、どうぞ、安心して一家に一体だけノウハウを置いて下さい。それが私のマニフェストで……」  晴美さんがそこまで言うと、  大歓声の中、 「ふざけるなーーー!!」  いきなり、警備の警察官の脇を掻き分けた男性が、白いロープを乗り越え、選挙カーの屋根に上って叫び散らす。 「日本が更に衰退するじゃねえかーー!!」  その男はズボンからナイフを手にしたが、瞬間、夜鶴のコルトが火を吹いた。  弾は男の胸に命中して選挙カーから道路へと転げ落ちていった。  夜鶴の射撃などの手の速さは、3年前の野球の試合で僕は知っていた。  僕は胸を撫で下ろした。  晴美さんは身を低くしていたが、また、真っ直ぐに立ち上がり、 「一家に一台だけノウハウを人間のサポートにする。これが、私の政策です。あくまでノウハウは人間のサポートなのです。どうか、皆さん。私に。人間性を一番に尊重する私に、清き一票をお願いします」  晴美さんは演説をしながらの選挙カーが僕の目の前を通り過ぎていった。  僕はもう安心だと思い。晴美さんの選挙カーを見送り、家に戻った。 「どう? 暗殺は防げた?」  34階のキッチンのテーブルで、顔を伏していた河守が開口一番その言葉を口にした。 「ああ……」 「どうしたの? 何か思わせぶりな顔ね?」  僕は胸騒ぎをしていた。 「何か変なんだ……?」  河守が立ち上がり、僕の顔を覗いた。 「変……?」  九尾の狐と原田が廊下のエレベーターからやってきた。 「取り敢えずは、一安心ね……」  九尾の狐は小型の端末を大事そうにテーブルに置いて、一息入れるために大量の砂糖を 入れたコーヒーをキッチンで淹れた。 「雷蔵さん。浮かない顔だね?」  原田はあのボディアタックのせいで、顔が上気している。  多分、久々なのだろう。 「ああ……今思ったんだけど……選挙には勝つのか?」  僕は胸騒ぎの原因が解りかけていた。 「それは……?」  河守が首を傾げた。  興田 道助の宣言では金がかからない。逆にA区を食い物にすれば、B区とC区。つまり、日本の将来性に金が入る政策だ。  しかし、晴美さんの政策は金がかかりすぎる。
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