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「頑張ってね!!」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振り、応援した。
「はい!! 妻の梨々花のために頑張ります!!」
流谷はすぐ目の前のコーナーを猛スピードで走り出した。
僕は未だスリーワイドから抜け出せずにいた。じりじりしそうだが、昔の僕の冷静さを保持し、相手の動きを観察した。
コーナーが迫って来た。
僕は横一台の車に体当たりをして、派手なドリフトをした。
「あっーと!! 雷蔵選手、体当たりとドリフトでスリーワイドを抜け!! 先頭のカナソニックスカイラインも抜いた!!」
竹友が信じられないといった顔で、斉藤と目を合わす。
「ええ……。信じられません……。人間には無理な冷静さですね」
「おや? 田場選手と島田選手は猛スピードでストレートを未だ走り続けていますね」
竹友は首を傾げた。
「あ、そうか?! 相手の車を寄せ付けないのではなくて、体当たりで追い払っているのでしょう」
斉藤は愕然として言葉を放った。
2週目。
広いレーシング場を走るのは後、後4週までになった。
僕は河守のために走っていた。
そう。A区のためにだ。
昔の僕が陥れようとした場所を、今度は全力で守ろうとしている。運命とは皮肉といえるのが普通なのだろうか。
晴美さんが好きだった。
昔からだ。
だけど、僕はいつの間にか河守が好きになっていた。
何故だろうか?
車が出せる最大限の猛スピードを、ストレートで振り絞る。僕の前方には誰もいない。その瞬間、僕だけが走るレースのショーをしている感じが、錯覚だけれど、していたんだ。
風の音も歓声の音もエンジンの音も、僕だけのものだ。
「興田君。例のものを……」
角竹のしわがれ声は震えていた。
この大歓声の中で、現奈々首相を暗殺してしまえば、いくら茶番で勝っても意味がないのだ。
「ええ……。解りました」
興田の声はしっかりとしている。息子のためにとこれまで、努力を惜しまなかった父としての最後の花向けなのだろう。
「父さん。俺にやらせてくれ」
道助は応援席にいるアンドロイドのノウハウ数体に合図を送った。
「晴美様!! 何か来ます!!」
アンジェが晴美の体を守るために、押し倒した。
その瞬間に、派手な音の後に今まで晴美さんがいた床に大きな穴が開いた。
「アンジェ!! まだよ!!」
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