片思い

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「雷蔵さん。スリー・C・バックアップのデータを10億で買えと、坂本 洋子が言ってきました」  坂本 洋子とは日本屈指のハッカーで、その道の人たちからは九尾の狐と言われている。 「10億なら安い。いいよ。買ってください」  僕は二つ返事で答えて、携帯を切った。  コインパーキングに大雨や雹の中、手を伸ばしてマイナンバーカードを差し込んで車を走らせた。  今ではマイナンバーカードはB区には現金がないので必需品だった。銀行の機能が付いていた。利息もあって、融資や借金もできる。つまり、銀行や金融機関はカードの数字だけを管理する管理会社となったのだ。後、各店のポイントカードなどにも対応されていて、お得なデビットカードのようなところがある様々な面に有効な身分証明書であった。    霜も降りないクリスタルの両開き自動ドアが開くと、そのまま液晶のワイドスクリーンが目立ち。会社の宣伝をしている地下へと入った。矢多辺コーポレーションは外部の人でも車でしか入る人がいない。  駐車場に正面玄関が広大な地下30階に一つずつある。  B区では車の免許を持っていない人はいない。  全体の76パーセントを占めるお年寄りや子供たち、あるいは障害のある人たちは、バスや電車などの乗り物以外では大きな建物の中には入れない。病院もそう。大きな建物の中に入るには救急車かバスや電車などの乗り物だけだ。  そういう。……歩道がないわけじゃないけど……。車両優先の構造を道路全体に施工されてあった。余談だが、大部分を都市開発プロジェクトでノウハウが建設し、滅多に交通事故が起きない世界になった。  地下26階に僕の車がおける駐車スペースが三つある。通路のゲートキーパーに挨拶をして、受付に手続きしてもらったら、車を駐車し。そこから少しだけ歩いて正面玄関から会社へと入った。  玄関から右に向かって歩くと、正面に社員用の高速エレベーターが10基ある広いホール。エレベーター内は60名が乗れる仕様だ。正面には受付と左側には自動販売機の列がある。  13名の重鎮とアンドロイドのノウハウが3体。いつもの時間に、急いでエレベーター内に入ってきた。 「雷蔵さん。おはようございます!」 「雷蔵様。おはようございます」 「おはようございます!!!」  社員の声に軽く会釈して、  僕はエレベーターに乗って、136階のボタンを押した。
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