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「二人とも私たちの老後のことを考えています。けれども、ノウハウが人間のサポートをするか、それとも人間をノウハウが……管理するかですね」
そこまで言うと、斉藤は大きく目を開いた。
竹友も驚いて口を開いた。
「三年前と同じだ!! 三年前の野球の試合とまったく同じ戦いです!!」
「晴美さん!! 試合はまだ終わっていない!!」
僕は応援席の晴美さんたちの袂へと走って戻ってきた。
「ええ……。そうですね。その通りです」
晴美さんが僕の顔を見つめた。
「雷蔵さん。あなたの戦いは人間の戦いでした。人間の力でノウハウを倒したのです……これから、私たちがしなければならないこと。それは人間性で機械に勝つことです」
僕は河守に笑顔を向けて、
「ええ……ええ…………そうですね…………」
僕は泣いていた。
「あ、田場選手と島田選手が6週目です。未だに周囲のノウハウの乗る車を寄せ付けません」
竹友が不思議がった。
「ドライビングテクニックがいいのです。周囲のノウハウの車は体当たりをして遠ざける。まるで、この無法レースを最初から得意としているみたいですね。その精神と腕で今まで走り抜いている。本当に……島田と田場はこのレースのためだけに生まれてきたみたいですね……もっとも……適正があるだけかも知れませんが……」
斉藤は微笑んだ。
島田と田場がそのままコントロールラインを鬼の形相でゴール。
後、二台。僕のチームの車が入れば勝利だ。
だが、相手も三台のノウハウの車がゴールしてしまっている。
後、二台。どちらかの車が先にゴールすれば決着する。
「斉藤さん。今、一番ゴールに近い車は?」
竹友が斉藤に首を向けた。
斉藤は素早くレーシング場を見回し、
「原田選手かペンズオイル ニスモーGTRですね。後、ニスモ GT-R LM。カルソニック スカイライン。流谷選手と遠山選手ですね」
斉藤はストップウオッチを見つめて、
「二番目が津田沼選手と山下選手です。でも全長12メートルのトレーラーのブロックじゃ、どうしようもないでしょう。三番目が淀川選手です」
「先頭のCチームはゴールをするためにと、その車を用意したようですね」
「ええ。そうでしょうね。改造をしていますし、かなり早いですね。おや?」
斉藤は原田の乗るスカイライン クロスオーバーを見た。
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