老人の将来

13/18
前へ
/99ページ
次へ
 原田はスピンをした。  相手のニスモ GT-R LMが体当たりをしたのだ。  その後ろを走る。トラックによって流谷と遠山もスピン。  ノウハウの時速300キロはでるトラックは妨害作戦をしだした。 「この勝負に勝つんだ!!」  角竹は作業班にしわがれた声を振り絞る。 「ええ……大丈夫ですよ。ノウハウには高度な思考ルーチンもあります。富田工場の最新データをアップデートしてありますから。妨害からゴールまで、人間よりも賢く攻め続けます」  茶色い作業服の男は少しだけ余裕を見せる顔をした。 「そうだといいが……」 「父さん。奈々川 晴美の暗殺。やっぱりそれもこの際は強化したらどうだい?」  道助は真剣な表情で言葉を噤む。  興田は何も言わなかった。  そして、更に、 「日本の将来は俺が立て直す。その言葉は小さい頃から繰り返していた。それが、今は実現っていう魅力ある現実を手に出来るんだからさ。これからもエレクトリック・ダンスを進めるために勝負にも勝って、奈々川 晴美も消さなきゃ」  道助は幼少時から日本の衰退ぶりを落胆していた。そして、政治家の道を歩んだ。 「道助くんの言う通りだ。興田くん。あの手を使おう。満川くん。もう一体のノウハウを応援席に潜ましてくれ」  角竹は満川の方を向いた。 「はい……」  応援席にテレビ局のカメラマンが撮影の準備をした。 「ここから、見えますのが……Aチームの応援席にてございます」  美人のアナウンサーは晴美さんのいる応援席で、藤元とタッグを組んで、放送していた。 「ハイっす!! 広々としていて風情がありますねーー」 「あるわけねえだろ!!」 美人のアナウンサーは吠えた。  藤元は晴美さんを面前に据えて、神社なんかでお祓いに使う棒を振り熱心にお祈りしていた。  晴美さんはカメラに向かって、ウインクした。  アンジェたちが一瞬緊張した。 「晴美様!! 何か変です!!」  アンジェは向かいの応援席を調べた。  高度な対人データ解析をしていると、一体のノウハウがロケットランチャーを隠している姿が瞳に映った。 「ヨハ!! 敵がいます!!」  アンジェはハンドガンを抜いた。  だが、一発の砲弾が放たれた。  砲弾は一直線に晴美さんの場所へと吸い込まれる。  夜鶴がコルトを抜いた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加