誰にも言えない私の食事

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   私が優しく断っているのを気付かなかったのか、それとも無視しているのか。   喉までせり上がってきた暴言を、どうにか飲み下し、笑顔で相づちを打つ。  私が従順なのがお気に召したのか、チャラ男は更に酒を飲み、自慢話を次々に繰り広げる。俺はアイドルにならないかと誘われた事があるとか、酔っ払った事はないとか。  私の表情は自身でもわかるほど歪でいく。それでもチャラ男は話を止めず、マシンガントークよろしく、勢いを増して話してくる。  初見でその人の印象の八割は決まるため、愛想を振り撒いておいたが、流石に我慢の限界にきた。むしろ、限界突破してマゼラン銀河までいくまである。私が、彼に「うるさい黙れウジ虫」といった旨を伝えるために何か口を開いた時。左側から甘ったるい声が耳に届く。   「後島せーんぱい、駄目ですよっ。ナンパなんかしたら、那奈怒っちゃいますよ!」  ボブカットにしてある若干短めの髪を揺らし、内股気味に可愛く走ってくる。そして、小柄ながらも、出るところは出てるという完璧ボディの持ち主がチャラ男に言い寄る。幼さを意図的に出しつつ、保護欲を煽る仕草、いや、技巧は同じ女性として感服してしまう。 「違うよ那奈ちゃ~ん。今度遊ぼーって誘ってだけだよ。心配すんなって」 「もー、本当ですか? 嘘だったら那奈げき怒ですよっ。真実を確かめるために瑠璃と二人で話します! 後島せんぱいはあっち行っといて下さい!」 「わかったわかった。じゃ、瑠璃ちゃん またあとでね」  私は軽く会釈だけして去っていくチャラ男の背中を眺める。彼が別の新入生(女)に話し掛けるを見届けると、隣から低い声が聞こえてくる。   「あーうっざ。テメーみたいなゴミ屑虫誰も気にかけちゃいねーよ。解れよ猿が」
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