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日が沈み、彩られた街灯が辺りを照らし、空は紫の幔幕のように美しく輝やいていた。
花見は宴会に変わり、宴会は飲み会へと変わっていった。設置されていた時計に目を向ければ、針は九時を指している。その事に気づいたのか、幹事は声を張り上げた。
「はーい、じゃあこれで歓迎会を終わりまーす、お疲れ様っしたー」
終了のお知らせがなったことで、部員は荒々しく片付けを済ませ、帰宅していく。朝方見た風情ある景色は、辺り一面に散らかされたゴミが夜の外灯に照らされて、見るも耐えないものになっていた。所々に立てられている清掃を促す掲示板には誰も目を向けることはない。
私が片付けなければならない、何てことはない。だが、参加していた者としては見てみぬ振りは出来ない。なによりも、罪滅ぼしの一つとして動かざるえないものだ。
桜の木の下に落ちている缶ビールに手を掛けた時、誰かの手が私の手と重なる。
「俺も手伝うよ」
そう、聞きお覚えのある声がふりかかる。
「なんかごめんね、瑠璃ちゃん一年なのにこんな事させちゃって」
チャラ男──五嶋先輩は申し訳なさそう頭を下げる。
なんだ、案外良いところもあるんだ。
少しばかり評価を上げた矢先、それが無意味になった。
「その、さ。片付け終わったら二次会っつーか、三次会つーか。とりま、カラオケいかね?」
なんだ、やっぱりナンパ野郎か。
無論、断ろうと口を開くが、言葉を出すことが出来なかった。
胸が締めつけられ、鼓動は早鐘のように鳴り始める。身体を巡る人外の血液は速度を速め、それに応じて体温が上がる。
痛い、苦しい、切ない。
「瑠璃ちゃん? ちょ、どうしたのっ!」
早く。
「直ぐに病院に連れてっから、ちょいまってて!」
速く。
「瑠璃ちゃん? 瑠璃ちゃん!」
「───先輩」
「なに、気分悪い?」
「ホテル、行きませんか?」
火照った身体でがり付くようにして、先輩の首に腕を回す。先輩の心の音が聞こてくるまで抱きつく。そして、私の懐に先輩の一部が当たる。
「……いこっか」
私の手を乱暴に引き、車のなかに引き込まれて、私達はホテルへ向かっていった。
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