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確かに危険性は毎回復唱する度言われるから、さすがに馬鹿じゃないしそれ位わかっているつもりだ。
この家に1台しかないとしても、動かそうと思ってもパスワード設定されているから、私が動かす機会は万が一にもないのに、彼は思っている以上に神経質なのかもしれない。
もしもこの家にファックスとかあったら同じように言われるんだろうかなんて思うが、そもそもこの家には固定電話がないし、あったとしてもこの調子なら触るなと言われそうだ。
「あ。なな、窓開けないでよ」
「え?」
今日は開けてないし、言われてから今までベランダで洗濯物を干したり布団を出したりしてないはずなのに何でだろうと思っていると、不意に頭を撫でられて体が強張る。
「干さなくても花粉結構入って来るみたいでさー……雨の日でも頼むから開けないでよ」
「う、うん……わかった」
少し硬い声で答えれば、背中越しに笑う気配が伝わり、思わず喉が鳴る。
「後2つは?」
「パ、『パソコン部屋にある新聞は触らない』のと……『お揃いのものは外さない』……」
最後の1つを言うと同時に、それがついた方を持ち上れば、彼が嬉しそうにうなずく。
「よく出来ました。じゃあよろしくね」
ぱっと背中から離れると、強張っていた体がゆっくりと弛緩していく。
彼とこの約束をする時はどうしても緊張してしまう。しかもそれは意識的じゃなくて無意識だからどうする事も出来なくて、こんな私変なのかなと思う事もあるが、優しい彼は人見知りの私らしいと笑ってくれるから少しだけ救われている。
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